オオムギの穂は二条性と六条性に大別されるが、六条性品種の中には側列小花が不規則に退化する「不斉条」がある。不斉条を示す系統は作期の違いや年毎の環境変動によって六条性或いは二条性に近い穂形態を示すことから、不斉条の側列小花の退化程度は可塑的である。表現型が視認できるため、環境応答性を解析する上で格好の素材と考えられるが、詳細な分子遺伝機構は明らかになっていない。本研究では不斉条遺伝子を単離し、環境に応答した穂形態の可塑性を制御する分子機構を明らかにする。研究方法としては準同質遺伝子系統を使用し、全ゲノム配列解読により変異を同定する。さらに、不斉条の形質発現がどのような外部環境に依存するのか明らかにする。本研究によりイネ科植物の小花発達抑制メカニズムに関する新規の遺伝機構が明らかになり、穂の可塑性が環境適応性にどのように寄与したのかの解明につながることが期待できる。今年度はオオムギ不斉条系統の形質発現機構を明らかにするため、圃場条件での栽培試験を行った。植物材料としてNBRP-barleyより分譲を受けたオオムギ標準品種セット274系統を使用した。鳥取大学乾燥地研究センター実験圃場と鳥取大学農学部実験圃場で秋まき栽培を行った。穂が完熟したのち、1系統につき10穂ずつサンプリングを行いスキャナーで画像を取得した。画像データから穂長、穂あたり小穂数を算出し、不斉条系統に関しては小花の欠落数を計測した。その結果、乾燥地研究センター圃場で小花の欠落歩合が農学部圃場よりも有意に高いことがわかった。先行研究において低肥料条件で不斉条系統を栽培すると小花欠落歩合が高まることが報告されている。砂地圃場では何らかの栄養素が欠乏している可能性が考えられるため、今後詳細に調査していく予定である。
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