オオムギの穂は二条性と六条性に大別されるが、六条性品種の中には側列小花が不規則に退化する「不斉条」がある。不斉条を示す系統は作期の違いや年毎の環境変動によって六条性或いは二条性に近い穂形態を示すことから、不斉条の側列小花の退化程度は可塑的である。表現型が視認できるため、環境応答性を解析する上で格好の素材と考えられるが、詳細な分子遺伝機構は明らかになっていない。本研究では不斉条遺伝子を単離し、環境に応答した穂形態の可塑性を制御する分子機構を明らかにする。研究方法としては準同質遺伝子系統を使用し、全ゲノム配列解読により変異を同定する。さらに、不斉条の形質発現がどのような外部環境に依存するのか明らかにする。本研究によりイネ科植物の小花発達抑制メカニズムに関する新規の遺伝機構が明らかになり、穂の可塑性が環境適応性にどのように寄与したのかの解明につながることが期待できる。今年度は不斉条穂を示すオオムギ系統を各種栄養条件で水耕栽培し、幼穂の発生段階を走査型電子顕微鏡で詳細に観察した。その結果、特定の微量元素欠乏区でコントロール区と顕著な違いが認められた。今後トランスクリプトーム解析を進め、不斉条穂の発現メカニズム解明を目指す。また、遺伝子単離に向けた準同質遺伝子系統の開発を進めた。不斉条形質がメンデル遺伝する集団を作成できたのでファインマッピングと遺伝子同定を行うことが可能になった。
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