研究課題/領域番号 |
19K15818
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
肥後 あすか 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任助教 (70812387)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 茎頂分裂組織 / フロリゲン / 植物幹細胞 / 転写制御 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、植物の地上部組織の起源となる幹細胞を含む茎頂分裂組織 (SAM)を短時間かつ高純度で単離することが可能であるイネを材料として、近年新たに開発された微小器官でのタンパク質-DNA間相互作用を検出する技術であるChIL-seq法および微量サンプルでのトランスクリプトーム解析が可能であるCel-seq2法を合わせて用いることで、SAMでの花成ホルモン (フロリゲン)の制御標的の網羅的な同定を行う。発芽後のSAMは栄養成長相にあり葉を分化するが、葉で発現を誘導されたフロリゲンが機能することで、生殖器官である花を分化する生殖成長相へと相転換する。SAMにおけるフロリゲンの転写制御標的を明らかにすることにより、SAMでの花成誘導機構の詳細を明らかにすることを目指している。本年度は、葉で発現したフロリゲンが到達して機能する場であるSAMにおけるDNAメチル化状態を栄養成長相と生殖成長相とで比較し、花成の際のエピゲノムの動態に関する特徴を解析し論文として発表した。DNAメチル化状態は、ヒストン修飾状態・クロマチンの高次構造に寄与するなどして、遺伝子の転写制御にも関連する。本年度得られた成果は、本研究で明らかにする、フロリゲンの転写制御標的を探索する際に、有用な情報となることが期待される。Cel-seq2法を用いた解析により、花成前後のSAMにおける詳細な遺伝子発現データを得た。これらを解析して、花成前後の遺伝子発現変動について、既存のものよりも時間解像度の高いデータを得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の前半は、緊急事態宣言を考慮して在宅でできることを優先して行っていたために、研究室で実験を行うということが予定していたよりもできず、ChIL-seq法の条件が計画通りには進まなかった。また、本年度の途中で、所属機関の移動があったために、計画通りに実験を行うことができなかった。一方で、データ解析に注力することができたために、データ解析の手法を身につけるとともに、トランスクリプトームデータの解析は計画通りに進めることができたので、全体の評価はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はフロリゲン/アンチフロリゲンの制御標的を網羅的に同定するために、抗GFP抗体を用いたChIL-seq法の条件を確定し、実験を行う。少数のSAMでの解析が困難である場合は、解析するタイムポイントを絞って実験に用いるSAMの数を増やすことで対応する。所属研究室を移動したことで、シロイヌナズナも実験材料として加えることができた。シロイヌナズナではイネと比較して、多くの変異体や組織特異的なレポーター系統も既に存在していることから、これらを駆使したアプローチも検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
緊急事態宣言の発令への対応や研究機関の移動などにより実験を行った期間が計画よりも短かったために、次年度使用額が生じた。研究実施期間が短かったために、研究の進行も研究より遅れているため、本年度に実施する予定であった実験を次年度に行うことにした。
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