研究実績の概要 |
本研究では、リン施肥量削減に向け、ダイズコアコレクションのAM菌接種による生育応答(Mycorrhizal Growth Response, MGR)を決定する地下部形質を解明することを目的とした。まず、根箱を用いたAM菌接種試験を実施し、MGRと根表面積、根長、AM菌感染率、養分吸収などとの関係を精査したが明瞭な傾向は認められなかった。一方で、非接種区と接種区に分けて、形質間の関係を調べた結果、非接種区のリン吸収量については根表面積で大部分を説明できるが、接種区のリン吸収量については根表面積ではほとんど説明できず、AM菌感染率で説明できることを明らかにした。そこで、次に、圃場で栽培した日本および世界のダイズコアコレクションとその他3系統の計180系統のAM菌感染率を調べた。その結果、日本のダイズコアコレクションのAM菌感染率は41.7から93.2%まで、世界のダイズコアコレクションは38.8から87.7%まで分布しており、日本のAM菌感染率のほうが世界のダイズコアコレクションに比べ高い傾向にあることがわかった。最後に、180系統のうち、感染率が異なり開花日の近い計90系統を、リン施肥(+P)区とリン無施肥(-P)区を設けた圃場で栽培した。その結果、AM菌感染率と、-P区の地上部乾物重および収量(低リン耐性)や、+P区と-P区の地上部乾物重比および収量比(リン施肥応答)との関係を調べたが、明瞭な関係は認められなかった。一方で、根系形質との関係を調べた結果、低リン耐性の大きい系統は、胚軸および根表面積の値が大きかった。また、リン施肥応答の大きい系統は、リン施肥に応答して胚軸を太くしていることがわかった。以上の結果から、低リン耐性およびリン施肥応答には、AM菌感染率ではなく、根系形質が関連していることが示唆された。
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