研究課題
本研究では、異なる光合成タイプのイネ科作物を対象に、葉組織の構造を丸ごと三次元情報として取得し、「組織における細胞の位置」、「各細胞の立体形状」、「細胞内における葉緑体の配置」の3点に着目し、光合成タイプやその特性との関連を見出すことを目指して取り組んだ。最終年度(2021年度)は、初年度に確立したウルトラミクロトームによる連続切片をスライドガラスに回収して順々に撮影した切片像を積み重ねる三次元再構築法を用いて葉構造の解析を行った。イネ(C3・温帯型)については、光学顕微鏡を用いた広視野での連続撮影に基づき、葉組織における細胞間隙、葉肉細胞群、その葉緑体を三次元再構築し、光合成に必要なCO2の取り込み能力に直結すると考えられている「細胞間隙に面する葉肉細胞の面積(Smes)および葉緑体の面積(Sc)」を実測した。さらに、葉組織の三次元空間データから葉の横断面と縦断面を抽出し、従来から多くの研究者に用いられてきた二次元断面像からの補正値を用いたSmes・Scの推定値も算出した。3D再構築像からの実測値と2D断面からの推定値の比較により、従来法を用いる場合にはイネの葉肉細胞の断面がよりシンプルな形状として観察される縦断切片を用い、双子葉植物において柵上組織に適用される“扁長形”用の補正値を施すと、より実測値に近づくことを明らかにした。シコクビエ(C4・NAD-ME型)については光学顕微鏡だけではなく、走査型電子顕微鏡(SEM)による高解像度撮影による三次元再構築も行い、葉肉細胞だけでなく、C4植物に特徴的な発達した葉緑体を持つ維管束詳細胞についても個々の葉緑体の形状を識別可能な精度で解析した。しかし、コロナ禍で海外渡航が制限され、計画していた西オーストラリア大学での高精度X線マイクロCTによる高速解析は行えず、観察種数が限られたため異なる光合成タイプ間の比較には至れなかった。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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