ダイジョのムカゴ形成・肥大機構について、短日+半湛水処理に対する個体レベルでの生理生態学的特性の変化を光合成および転流の面から検討した。その結果、対照区と比較して処理区の光合成速度・気孔伝導度は、処理後20日目までに有意に低下した一方、収穫期(処理後40日目)では対照区でも低下する傾向があり処理区間で差はなかった。炭素安定同位体を用いたトレーサー実験により、処理区間でソース-シンク単位を比較した結果、処理区では形成されたムカゴへ同化産物が多く分配されることを見出すとともに、新芋肥大初期(処理開始日)に同化した炭素は、新芋への分配比が低く、葉や茎部に多く蓄積することが明らかになった。これらの結果から、ムカゴの形成には地下部の環境ストレスを感知して地上部へと輸送される、または地上部で生合成されるアブシジン酸が関与していることが示唆され、それにともなって茎部に蓄積した同化産物が転流し、ムカゴが肥大すると考えられた。 次に、ダイジョ突然変異系統群の作出を目的として、塊茎片に対する最適なX-線照射強度を照射後の不定芽分化率(生存率)から検討した。その結果、照射強度が高いほど不定芽の分化率が低下し、不定芽分化率が60%であった20Gyから25Gyでの照射がダイジョ塊茎での変異誘発に適した線量であることが明らかになった。これまでに1350個体へのX-線照射を完了しており、系統育成を行いながら有望系統の表現型スクリーニングを行っている。
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