研究課題/領域番号 |
19K15825
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研究機関 | 高崎健康福祉大学 |
研究代表者 |
橋田 庸一 高崎健康福祉大学, 農学部, 助教 (00802886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イネ / 糖代謝 / ショ糖合成 / SPS / cFBPase / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
本研究では、イネの葉におけるショ糖合成の真の制限要因の解明を目的とし、①ショ糖合成経路のSPSよりも上流の酵素である細胞質型フルクトース-1,6-ビスリン酸フォスファターゼ(cFBP)がショ糖合成の制限要因である、②cFBPとSPSを介する経路以外にもショ糖合成経路が存在する、という2つの仮説を検証する。本年度行った研究は以下の通りである。 1.昨年度に引き続きCRISPR/Cas9システムによるSPS多重変異体の作出を進めた。5つのSPS遺伝子(OsSPS1、OsSPS2、OsSPS6、OsSPS8、OsSPS11)のうち、OsSPS2、OsSPS6、OsSPS8の3遺伝子がノックアウトされた3重欠損変異体は矮性になることが明らかとなった。残りの2遺伝子(OsSPS1、OsSPS11)が葉身におけるSPS酵素活性の約80%を担うことから(Hashida et al., Plant Sci., 2016)、葉身以外、あるいは葉身における特定の部位・器官においてこれらの3遺伝子が重要な役割を果たす可能性が示唆された。 2.OsSPS1がノックダウン、OsSPS11がノックアウトされた二重変異体を人工気象器で栽培し、弱光条件では野生型と生育に差がないことを確認した。この系統に対し、OsSPS2、OsSPS6、OsSPS8の3遺伝子をノックアウトするコンストラクトを導入し、再分化個体を得た。現在、KOされた遺伝子と表現型の対応を調査している。 3.昨年度に引き続きTos17突然変異系統群の中からcFBPをコードするOscFBP1遺伝子がノックダウンされた系統のスクリーニングを進め、候補となる系統を1系統見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたトランスクリプトーム解析を行うことができなかったが、OsSPS2、OsSPS6、OsSPS8の3重変異体が矮性を示すという予想外の成果が得られた点は評価できる。解析に必要な変異体の作出はほぼ完了しており、次年度に変異体の生育、糖代謝、トランスクリプトームの比較を行うことで本研究の目的は達成可能なことから、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに確立したSPS多重変異体を用いて、生育および糖代謝の比較を行い、イネの生育に最低限必要なSPS酵素活性、あるいはSPS遺伝子の組み合わせを明らかにする。また、SPS多重変異体のトランスクリプトーム解析を行い、SPS活性の低下がイネに及ぼす影響を多面的に明らかにする。また、同様の解析をcFBP1変異体に対しても行い、イネの葉のショ糖合成におけるSPSとcFBPの寄与の違いを明らかにするとともに、cFBPとSPSを介する経路以外のショ糖合成経路の存在を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたトランスクリプトーム解析を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度トランスクリプトーム解析を実施するため、受託費用を計上する。
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