2020年度までに、食用アスパラガスの雄株特異的転写因子で花粉発達の制御因子であるAoMYB35とシロイヌナズナにおけるAoMYB35相同因子であるAtMYB35が結合するDNA配列をDAP-Seq(DNA affinity purification sequencing)により解析していた。2021年度は、先行研究で得られていたトランスクリプトームデータと上述のDAP-Seqのデータに基づき、AtMYB35の下流で花粉の発達を制御する遺伝子を推定し、その中から食用アスパラガスにも相同遺伝子が存在するものを10個抽出し、それを欠損すると考えられるシロイヌナズナ変異体を取得し、その表現型を解析した。これらの幾つかは雄性不稔の表現型を示すと期待していたが、そのような表現型を示すものは無かった。しかし、それらの株の中の一個で目的遺伝子外に変異を持つものから、半不稔の表現型を示すものが得られた。交配実験により、この半不稔の表現型の原因は花粉ではなく雌しべにあることを確認した。花粉管のアニリンブルー染色により、当該変異体の雌しべにおいては大部分の花粉の花粉管が柱頭付近で伸長を停止して胚珠に至らず、これにより受精の頻度が低下することが示唆された。 先行研究で食用アスパラガスの雄株特異的遺伝子の候補としてAoMYB35以外に11個の遺伝子が同定されていた。これらの遺伝子に特異的なプライマーを用いてゲノミックPCRを行い、その中の2個が真に雄株特異的である(他の9個は雌株にも存在する)ことを確認した。次世代シークエンシングのデータを用いてその他の雄株特異的遺伝子の候補を同定することも試みたが、これにおいてはそのような遺伝子は同定できなかった。
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