当該年度は主に以下の2点について検討を行った。 ① オオハリガネゴケ (Bryum pseudotriquetrum) において南極環境で高発現している未同定遺伝子の単離および発現解析:前年度に実施したトランスクリプトーム解析により、南極環境下で高発現している遺伝子群が明らかとなった。その中には既知の遺伝子と相同性の低い未同定遺伝子が含まれていた。これらのうち、特に高い発現量を示す5個の遺伝子について、RACE法による全長配列の単離を試みた。その結果、一部の遺伝子については部分配列の獲得に成功している。今後、引き続きRACE法による全長単離を行い、その後、形質転換体作出による機能解析を実施する予定である。 次に、これらの遺伝子について、人工的な低温、塩および乾燥ストレス処理に対する発現への影響を調査した。その結果、一部の遺伝子は、ストレス処理から数日間のうちに明らかな発現量の増加を示した。一方で、明らかな発現の変動を示さない遺伝子も観察されたことから、今後はより長期のストレス処理の影響を調査する予定である。 ②ハリギボウシゴケ (Grimmia lawiana) 由来DREBホモログ遺伝子 (GlDREB1) の機能解析:本年度はRACE法を用いてGlDREB1の全長配列を単離した。単離されたGlDREB1はDREB遺伝子に特徴的なAP2ドメインを有していた。また系統解析を行ったところ、GlDREB1はDREB A-5 familyに属することが示された。次に、形質転換によるGlDREB1の機能解析を検討するため、GlDREB1を35S CaMVプロモーター制御下で発現するバイナリーベクターを構築した。その後、フローラルディップ法によるシロイヌナズナの形質転換を行った。現在T1種子を選抜中であり、今後、T2世代において各種の環境ストレス耐性について調査を実施する。
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