ペチュニアは二色以上の花色(複色)模様の品種も存在し,その模様のパターンは星形,覆輪,グラデーション模様と様々である.ペチュニアは鉢物や花壇苗としての利用が多く,ジベレリン(GA)生合成阻害剤(矮化剤)処理による草丈伸長の抑制が行われる場合があるが,矮化剤処理が花弁複色模様に影響を及ぼすことがある. 矮化剤が花弁複色模様に与える影響を調査するため,矮化剤であるダミノジッド(SADH)とGAを覆輪模様,星形模様,グラデーション模様,単色のペチュニアに処理した.SADH処理を行った星形模様および覆輪模様のペチュニアでは着色部位が減少し,花弁全体が白色に変化した.一方でGA処理を行った星形模様および覆輪模様のペチュニアでは,白色部位が減少し,花弁全体が着色した.グラデーション模様および単色のペチュニアでは,花色に影響は無かった. ペチュニアの複色模様の形成にはCHSの転写後抑制(PTGS)が関与していることが報告されており,白色部位ではCHSのsiRNAが蓄積することが知られている.本研究では,SADH処理およびGA処理下でのCHSのsiRNA量を調査した結果,SADH処理ではsiRNA量が増加し,GA処理ではsiRNA量が減少することを明らかにした.以上の結果より,GAはCHSのPTGSを介し,花弁複色模様の形成に影響することが示唆された. ペチュニアの花弁に含まれる内生GAとしては,GA4やGA9が報告されている.GA4は活性型GAであり,GA12から順次GA15,GA24,GA9,GA4と生合成される.SADH処理によってGA生合成を抑制したペチュニアでGA4およびGA9を処理した結果,GA4処理では花弁複色模様が形成されたが,GA9処理では花弁全体が白色のままであった.以上の結果から,花弁の複色模様の形成には活性型GAであるGA4の働きが重要であることが示唆された.
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