研究課題/領域番号 |
19K15841
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
兵頭 究 岡山大学, 資源植物科学研究所, 助教 (80757881)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 植物ウイルス / ゲノムRNA複製 / プロトン / V-ATPase |
研究実績の概要 |
植物は病原体の攻撃に加えて、周辺環境の変動など、多様な外的ストレスに同時に晒される。多様なストレスに頑健性を付与する次世代作物保護技術の開発のためには、「病原体感染戦略の分子メカニズム」に加えて、感染によって宿主植物にもたらされる「生理学的変化」の影響を理解することが必要となる。本研究は、ウイルス複製酵素タンパク質と結合する宿主V-ATPase (細胞内プロトン恒常性維持に関わる膜タンパク質複合体) に着目し、「宿主プロトンダイナミクスの改変による植物ウイルス増殖戦略」と感染に付随する「宿主プロトン恒常性の変化とその生理学的影響」の理解を目指している。本目的の達成にあたり、red clover necrotic mosaic virus (以下、RCNMV) をモデルウイルスとして計画を進めた。 昨年度に実施したタンパク質間相互作用解析およびイメージング解析から、RCNMVは複製酵素タンパク質p27を介して宿主V-ATPaseのサブユニットEに結合し、ウイルス複製コンパートメントへとリクルートすることが明らかとなった。さらに、V-ATPase活性阻害剤およびV-ATPase Eサブユニットのノックダウン植物を用いた解析から、V-ATPase活性はRCNMVの一細胞レベルでの複製に必要であることが明らかとなった。また、p27はV-ATPase活性依存的にウイルス複製コンパートメントのpHを低下させることを支持する予備的データを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」欄に示したように、RCNMVの持つ増殖戦略 「V-ATPaseをハイジャックしウイルス複製に転用する」 が明らかとなりつつある。当初の計画に沿って研究を進めることができており、概ね順調であると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
RCNMVは複製酵素タンパク質p27を介して宿主V-ATPaseサブユニットEと相互作用し、その細胞内局在を変化させることから、RCNMV感染植物ではV-ATPase活性あるいはV-ATPaseを必要とする生理学的応答 (塩ストレス耐性など) に変化が見られる可能性が考えられる。そこで、RCNMV感染組織におけるV-ATPase活性の生化学的解析やRCNMV感染植物の塩ストレス耐性の評価試験を行う予定である。さらに、植物ウイルス感染におけるV-ATPase要求性の普遍性を検討するために、様々な植物RNAウイルスのV-ATPase要求性について、阻害剤およびノックダウン植物を用いて検証する。また、これらのウイルスが細胞内pHやV-ATPase活性に及ぼす影響も併せて解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:昨年度予定していた解析の一部を次年度に行うこととしたため。また、COVID-19により予定していた学会参加・研究打ち合わせが中止となったため。
使用計画:研究を実施するにあたり必要となる消耗品の購入、論文投稿にかかる諸費用に使用する。
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