研究課題/領域番号 |
19K15844
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
平井 洋行 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助教 (70748847)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | OsCPK8 / OsNAC4 / 過敏感細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、イネ過敏感細胞死を正に制御している情報伝達因子OsCPK8からOsNAC4への情報伝達経路の解明とOsNAC4がどのような遺伝子を発現制御しているかについて解明することを目的としている。前年度までに、OsCPK8がOsNAC4を直接リン酸化していることを明らかにした。そこで当該年度は、OsNAC4によって制御されている遺伝子の同定を試みた。まず、OsNAC4遺伝子発現抑制培養細胞の作製を行い、OsNAC4遺伝子の発現量を調べたところ、野生株と比べてOsNAC4遺伝子の発現量が10%以下まで抑えられた形質転換培養細胞を得ることができた。しかし、コロナ禍であったため、この培養細胞を用いてChip-seqやRNA-seqを行うことはできなかった。そのため、OsCPK8の下流に存在することが明らかとなっている2,308個の遺伝子の中から過敏感細胞死誘導時特異的に発現が誘導されている遺伝子を抽出した。その結果、139個の遺伝子を抽出することができた。これらの遺伝子の中には、エンド型のヌクレアーゼをコードしている遺伝子や小胞体局在型の分子シャペロンをコードしているOsHSP90遺伝子が存在していた。そこで、これらの遺伝子をイネプロトプラストに過剰発現させたところ、エンド型のヌクレアーゼを発現させた場合は核DNAの断片化が、OsHSP90の場合は細胞膜透過性の喪失がそれぞれ認められた。次に、これら遺伝子の上流2k bpをルシフェラーゼ遺伝子の上流に連結させたレポータープラスミドをそれぞれ作製し、OsNAC4を過剰発現させるためのプラスミドと同時にイネプロトプラストに導入した。その結果、両レポータープラスミドともルシフェラーゼ由来の発光は認められなかった。以上のことから、OsNAC4の下流にエンド型ヌクレアーゼ遺伝子とOsHSP90遺伝子が存在するが、OsNAC4はこれらの遺伝子発現を直接制御していないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の研究目標は、OsNAC4の下流に存在する過敏感細胞死誘導関連遺伝子の同定である。これについては、コロナ禍であったこともあり当初の予定であったChip-seqやRNA-seqを実施できなかった。そのため、別のできうる限りの方法を用いて関連遺伝子の同定を試みた。その結果、OsNAC4の下流にはエンド型のヌクレアーゼ遺伝子とOsHSP90遺伝子が存在することが明らかとなった。さらにこれらの遺伝子発現はOsNAC4によって直接的に制御されていないことも明らかとなったため、順当に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の研究によって、OsNAC4の下流に存在する過敏感細胞死誘導関連遺伝子が明らかとなった。またその発現制御についての情報も得ることができた。しかし、これらの情報は未だ過敏感細胞死誘導機構の一端であることは否定できない。そのため、今後は、当初予定していたChip-seqとRNA-seqを実施することにより過敏感細胞死誘導機構の全体像を明らかにすることを予定している。また、過敏感細胞死の特徴である細胞膜透過性の喪失にはOsHSP90が関与していることが明らかとなったが、OsHSP90の下流に実行因子が存在していることが予想できる。そのため、この実行因子の同定も進めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では、支払請求額と実支出額に大きな隔たりがあった。この原因として、コロナ禍が影響していると言わざるを得ない。コロナ禍により研究計画を大きく変更しなければならなかったため、予定していたChip-seqやRNA-seqを実施できなかった。ただし、コロナ禍であっても実験を実施できるよう準備を進めてきたため、来年度にはChip-seqやRNA-seqを実施する予定である。
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