研究課題/領域番号 |
19K15845
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
原田 賢 龍谷大学, 農学部, 実験助手 (40795184)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 銅イオン輸送因子 / メラニン生合成 / 炭疽病菌 |
研究実績の概要 |
多種の作物に感染する炭疽病菌と世界七大病害の一つであるイネいもち病菌は付着器と呼ばれる濃褐色を呈するドーム状の構造体の感染器官を形成する。本器官の色素の生合成は宿主侵入の可否を決める重要な要因であり、その制御機構を分子レベルで理解することは新規防除剤の開発に繋がる。これまでに4種のメラニン生合成酵素が同定されており、適切なメラニン生合成を行うには、これらの酵素活性を制御する必要がある。本研究では、細胞内銅イオン輸送因子の機能解析を行い、植物病原糸状菌のメラニン生合成酵素ラッカーゼの活性を制御する細胞内の銅イオン輸送機構を解明する課題である。 本年度の研究では、ウリ類炭疽病菌の銅輸送因子Ict1の金属結合モチーフ(MXCXXC)を構成するメチオニンと2つのシステインがメラニン生合成に関与することを見出した。また、銅イオン輸送P型ATPaseであるCcc2もメラニン生合成に関与していた。しかし、銅イオン輸送P型ATPaseで2つの金属結合モチーフをコードする遺伝子(Cob_01124)はメラニン生合成に関与していなかった。 殺菌剤フェリムゾンに対する感受性低下株のメラニン生合成能は低下することから、ict1破壊株と同程度のフェリムゾン感受性低下とメラニン生合成能の低下がみられた4株のセクター株を選抜した。これらの株はIct1のORF領域に変異は見られず、新規メラニン生合成関連因子に変異がある可能性が示唆された。また、Ict1の相互作用因子を同定するために、ICT1に3xFLAGをタグしたICT1-3xFLAG発現コンストラクトをict1破壊株に導入し、ict1/ICT1-3xFLAG相補株の作出に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画で予定されていた項目は、①CoIct1における銅イオン結合能の評価②メラニン合成に関わる細胞内銅イオン輸送因子の同定の2つである。メラニン生合成の制御にIct1の金属結合モチーフが関わることと新規メラニン生合成制御因子Ccc2を同定したことから、現在までの進捗状況としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
メラニン生合成酵素ラッカーゼに銅イオンを供給する細胞内の輸送ネットワークを解明するために、Ict1のプロテオーム解析とセクター株のRNAシークエンス解析を行う。また、ウリ類炭疽病菌での機能解析の結果を基にイネいもち病菌における相同遺伝子の遺伝子破壊株を作出し、性状解析を行う。これにより、植物病原糸状菌においてラッカーゼの活性を制御する銅イオン輸送経路は共通するのか、検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に予定されていたRNAseq解析を次年度に延期したため、繰越金が生じた。次年度、消耗品代とその他経費に繰越金はあてる予定でる。
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