研究課題/領域番号 |
19K15850
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
竹下 和貴 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (40799194)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 細胞内共生 / オオホシカメムシ / バークホルデリア / 感染特異性 |
研究実績の概要 |
オオホシカメムシは、昆虫としては例外的に培養可能な共生細菌(バークホルデリア属)を腸管上皮細胞内に細胞内共生させている。本研究では、このオオホシカメムシで見られる共生系を「昆虫細胞内共生の新規モデル共生系」として確立することを目指している。本年度は、(1)オオホシカメムシの飼育環境の整備、(2)オオホシカメムシより単離した細胞内共生細菌のゲノム解読および遺伝子組換え実験系の構築、(3)細胞内共生細菌の感染動態調査に取り組んだ。 (1)に関しては、2019年初夏に沖縄本島北部にてオオホシカメムシのサンプリングを行い、所属する秋田県立大学にてオオホシカメムシの維持飼育を開始した。2020年4月時点では、順調に継代飼育ができている。今後、実験に使用できる個体数を十分に確保できるよう、徐々に飼育規模を大きくしていく予定である。(2)に関しては、2016年度および本年度にオオホシカメムシより単離したバークホルデリア属の細胞内共生細菌2株の完全ゲノムを決定した。ゲノムサイズは、それぞれ9.5 Mbと11.2 Mbと、近縁のバークホルデリアと同程度かそれよりも幾分大きかった。これら完全ゲノムに関しては、現在、投稿論文を準備している。また、完全ゲノムを決定した2株の緑色蛍光タンパク質発現変異株(GFP株)の作製に成功した。一方の株では、任意の遺伝子欠損株の作製にも成功している。(3)に関しては、上記で作製したGFP株の再感染実験に成功した。現在、共生細菌の定量を行うための、定量PCR系の構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、オオホシカメムシの維持飼育に成功し、共生細菌の再感染実験にも成功した。次年度に使用予定の細胞内共生細菌に近縁なバークホルデリア属既知種の輸入も、新型コロナウイルスによる世界的な混乱を前に完了できた。使用を予定していた所属大学の共焦点顕微鏡が古くて実用に耐えられないという誤算を除いて、今のところは当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
計画最終年度は、以下の2項目の実験を実施する。 (1) 細胞内共生細菌の感染動態調査(前年度から継続) 感染後の時間経過とともにどのようなダイナミクスで細胞内共生細菌が増殖するか、感染後どのタイミングで宿主細胞内に侵入するか、を顕微鏡観察および定量PCRにより明らかにする。共焦点顕微鏡に関しては、近隣の秋田大学所有機器の利用を検討している。 (2) オオホシカメムシに対するバークホールデリア属細菌の感染実験 各種細菌をオオホシカメムシへ感染させ、それらが細胞内共生可能か調査する。結果をもとに、オオホシカメムシに細胞内共生可能なバークホルデリアの感染特異性を明らかにし、さらにその要因を考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で参加予定であった学会が中止となったことに加え、同影響により入手困難になると研究に対する影響が大きい消耗品を事前に購入したため、差額が生じることとなった。
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