本研究では,ウイルス感染によりメスしか産まなくなったハスモンヨトウの系統(全メス系統)を用いて,宿主の生殖操作を行うウイルスの伝播戦略を調査し,ウイルスが昆虫の性を操作することの進化的意義を探求する.また,全メス系統からウイルスを精製・分離し,ウイルスのゲノム配列の決定,全メス現象を引き起こす遺伝子の特定に挑戦する. 本年度は当初の計画に沿って①性染色体構成の組織学的証明,②生殖操作ウイルスの性状解析を行った. ①岩手大学の協力のもと染色体FISHを行うことにより,ハスモンヨトウの性染色体はZW型であることが,示された. ②ノーザンブロッティングとRT-PCRにより,この生殖操作ウイルスは一本鎖プラス鎖RNAウイルスで,複数の分節ゲノムを持つことが示された.また,RACE法により全長ゲノム配列を決定し,RNA依存性RNAポリメラーゼを用いてウイルスの系統解析を行った.さらに,密度勾配遠心法によりウイルスを分離し,電子顕微鏡観察にてウイルス像の撮影に成功した.
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