研究課題/領域番号 |
19K15859
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
安藤 温子 国立研究開発法人国立環境研究所, 生物・生態系環境研究センター, 研究員 (70761063)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海洋島 / 種子散布 / 結実季節 |
研究実績の概要 |
伊豆諸島の八丈島と八丈小島において、各島のカラスバト個体数、島間を移動する個体数、各島における結実フェノロジーをモニタリングした。また、カラスバトの糞を採取し、中に含まれる種子を検出し、計測、植物種の同定を行なった。各島及び島間を移動するカラスバトの個体数は季節的に大きく変動し、結実量の多い季節ほど観察個体数も増加した。これは、八丈島と八丈小島において食物が豊富な時期に、伊豆諸島もしくはそれ以外の島嶼部からカラスバトが移動してきていることを示唆している。 カラスバトの個体数の変動に伴い、糞の採取数や検出される種子の数も季節的に変動し、カラスバトの個体数が多い特定の季節に多くの種子が検出された。このことから、八丈島および八丈小島においては、特定の季節に島間を種子が散布される可能性が高いことが示唆された。糞からはクワ類やヒサカキなど小型の種子が数多く検出された。これらの植物の結実季節は、カラスバトの島間移動個体数の季節性と類似していた。カラスバトは種子食者と考えられてきたが、一連の調査の結果から、小型種子の長距離散布には貢献している可能性が高いと考えられた。これらの成果はIsland Biology 2019, 日本鳥学会2019年度大会、7th Frugivore and Seed Dispersal Symposiumにおいて発表された。発表内容をもとに、現在論文執筆を進めており、生態学関係の雑誌に投稿予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
毎月のモニタリングは滞りなく進めることができた。新型コロナウイルスの影響で研究者自身が現地に行くことが困難になったが、現地在住の共同研究者に調査をお願いすることでモニタリングを完了するに至った。研究成果については国内外の学会で発表を行うことができ、その内容についても概ね好評であった。発表内容に基づく論文執筆の見通しも立っている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのモニタリング調査と糞分析により、カラスバトに島間を散布される可能性の高い植物を特定することができた。今後は、それらの植物と、カラスバトに散布されない植物の遺伝構造解析を行うことにより、カラスバトの島間移動が植物の遺伝子流動に及ぼす影響について検証する。また、島嶼生ハト類の果実食と種子散布に関して、スペイン領カナリア諸島をフィールドとする研究者との共同研究を予定している。研究者自身も現地に滞在して文献調査や野外調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
悪天候や新型コロナウイルスの関係で現地への出張回数が減り、旅費の使用が減少したため。コロナウイルスについては契約依頼の締め切り後の対応であったため、物品費への振替も十分にできなかった。
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