研究課題/領域番号 |
19K15869
|
研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
中原 亨 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10823221)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ノスリ / 生息適地推定 / 生物多様性 / 里山 / 越冬環境 / アンブレラ種 |
研究実績の概要 |
本研究では、二次的自然環境下で越冬するアンブレラ種の猛禽類ノスリを指標種として、ノスリの存否をもとに高い生物多様性を内包する環境を抽出し、その変遷を明らかにすることを目標としたものである。 2021年度は、今までに把握できていなかったエリアのノスリの追加捕獲と遠隔追跡を行って越冬環境を把握するとともに、近年九州内で観察した個体の位置情報とGPS機器にて追跡した個体の位置情報をもとに、九州に生息するノスリの越冬適地の抽出を試みた。越冬適地の解析には、在データのみからの予測が可能なMaxentモデルを用いた。3次メッシュスケール(約1㎞四方)に越冬情報を集約し、環境変数として2016年の3次メッシュの各種土地利用割合・標高のばらつきを用意して解析を実施した結果、現在の生息適地は九州の山際の農耕地に広がっていることが分かった。さらにこのモデルを、1976年の土地利用データを用いて外挿した結果、1976年には現在より多くの生息適地があったことが推定された。つまり、1976年から現在にかけて、生息適地の減少が起きていることが示唆された。さらに、既存文献にて提供されている2050年の土地利用予測シナリオを入手し、同様に外挿し現在の結果と比較したところ、人口が分散化するシナリオにおいて、現在から2050年にかけて生息適地が増加に向かう可能性が示唆された。 さらに、2020年度に北九州市内の水田・畑地の多い里山環境で実施した、実際に越冬期にノスリの追跡個体が使用していた行動圏のコアエリア内外の鳥類・小動物群集調査の結果を集約した。2019年度に結果を集約した果樹園の多い長崎の調査地とは異なり、コアエリア内外の鳥類相・哺乳類相の明確な違いは確認できなかった。今後詳細な解析を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野外調査については2020年度までの捕獲調査の補足となるものを小規模ながら実施できた。 データの集約・解析については、当初想定していたことはおおよそ実施することができたが、解析に用いたモデル改良の余地も残っており、引き続き追加解析が必要である。 また、2020年度までに行ったノスリの行動圏の生物多様性調査・ノスリの生息環境解析に関して、論文を執筆・投稿する予定であったが、執筆が進まず投稿には至らなかった。
以上より、「やや遅れている」ものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度はデスクワークに専念する。前年度までに取得した生物多様性調査データや生息適地推定の追加解析を行うとともに、ノスリの越冬環境選択に関する論文を執筆する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
英文校閲費用として使用する予定だったが、執筆が遅れたため執行できなかった。本年度論文を執筆した際の英文校閲費として使用予定。
|