本研究では、二次的自然環境で越冬するアンブレラ種の猛禽類ノスリを指標種として、九州においてノスリが越冬なわばりを形成し多くの餌生物を採食する環境をもとに、冬季に高い生物多様性を内包すると思われる環境を抽出し、そうした環境の変遷状況を明らかにすることを目標としたものである。 研究期間中に取り組んだ福岡県・長崎県・宮崎県で越冬するノスリの遠隔追跡により、ノスリの生息適地は山際の農耕地(水田・畑・果樹園など)を含む場所に広がっていることを明らかにした。また、生息適地の環境は1970年代と比較して減少していることが明らかになった。さらに、土地利用変化と人口変化を考慮した推定により、人口が分散化するようなシナリオ下では、2050年ごろにかけてノスリの生息適地は増加に向かう可能性が示唆された。 2023年は、2022年度に引き続きデスクワークに専念し、これらの研究成果を総括したうえで論文執筆に取り組んだ。
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