研究課題/領域番号 |
19K15873
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
細川 奈々枝 秋田県立大学, 生物資源科学部, 特任助教 (80821602)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リン利用性 / ピロリン酸可溶のアルミニウム / 鉄と結合したリン / 黒ボク土 / 土壌の全窒素 |
研究実績の概要 |
リンの利用性が窒素の空間分布にどのように影響するか明らかにするために本年度は、リンの空間分布に影響する要因解明を中心に行った。まず、アロフェン質黒ボク土、非アロフェン質黒ボク土、褐色森林土が分布する秋田県西部の八郎湖森林流域内のスギ林29地点から0-10cm, 10-20cm深の土壌を採取した。この土壌試料を用いて、全リン量測定、関谷法によるリンの分画定量、火山灰土の混入程度の評価(酸性シュウ酸塩可溶の鉄(Feo)とアルミニウム(Alo)、ピロリン酸可溶のアルミニウム(Alp)、Alp/Alo)を行った。その後、全リン量や分画したリン量に火山灰土の混入程度指標や土壌pH、標高、傾斜などの地形要因がどのように影響するか、相関解析や重回帰分析、回帰木などを用いて検討した。その結果、火山灰土の混入程度は全リン量や関谷法で抽出したリンの総量とは相関がみられなかった。しかし重回帰分析の結果、Alpは鉄結合型のリン量を増加させる効果があることが分かった。また、リンの利用性が土壌窒素の空間分布に与える影響を検討するために、リン利用性や黒ボク土の混入程度と土壌の全窒素量を比較した。その結果、Alp/Aloと土壌の全窒素量に正の相関があることが分かった。本年度のもうひとつの研究目的であった関谷法の改良のために、文献調査と予備実験を行った。予備実験では、八郎湖森林流域の9地点の土壌を用いて、関谷法とHedley法の抽出を行い、それぞれの方法で抽出されるリン量や各画分のリン比率を比較した。その結果、両法で抽出効率が異なったが、それぞれで鉄と結合したリンとされる画分に相関関係が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に計画していた黒ボク土がリン利用性に与える影響やリン利用性が窒素無機化にどのように影響するかについては、予定通り遂行することができた。リンの分画定量法の改良については、予想していなかった課題が出たり、サンプルの入手が予定より難航したりなどの事情により、予定よりも進捗が遅れた。しかし、以上の成果で学会発表2件を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
窒素無機化速度指標を測定し、これまでに明らかになったリン利用性や黒ボク土との関係を解析する。そのためにまず、リン酸バッファー抽出窒素量と関谷法で抽出したリンとの相関解析をする。その結果をもとに、調査地点を絞り込み、土壌を採取する。採取した土壌を用いてインキュベータを用いた室内実験を行う。また、関谷法の改良に向けて、土壌型や土地利用形態の異なるサンプルを用いて関谷法とHedley法を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や器具類等の消耗品の大幅な節約ができた。また、実験の予定変更やコロナウィルス拡大等の影響によって、予定していた国内外への学会参加が中止になった。
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