研究実績の概要 |
初年度の成果としては, 以下の2点が挙げられる。(1)割り箸の最適な設置期間を1年間と決定した。(2)公開データを用いてランダムフォレスト法によるティーバッグ分解速度予測モデルを作成した。無添加の割り箸2種類を熊本県立田山のスギ林およびヒノキ林に設置し分解試験を行うことで, 最適な設置期間は1年間であると決定した。さらに, 熊本, 京都, 長崎, 北海道に試験地を設置し,機械学習モデルの構築に必須の割り箸・ティーバッグ分解データを取得する体制を構築した。それに加え, 2019年の9月に他の研究チームからティーバッグ分解データがデータペーパーとして公開されたため, そのデータを解析してランダムフォレストモデル法によるティーバッグ分解速度予測モデルを作成した。作成したモデルの予測精度をhold-out法によって検証したところ, R2は0.37であった。モデル作成のためのサンプル数が62点であった点を考慮すると, 今後データが蓄積された場合, ランダムフォレストによる推定は十分可能であると考えられた。説明変数の相対重要度を解析したところ, 平均気温が最も重要な変数として選択された。さらに, 部分従属プロットを作成し, 説明変数と分解速度の関係を解析したところ, 平均気温, 降水量, 日射量, 相対湿度が上昇するほど, ティーバッグの分解が速くなることが明らかになった。一方, 標高, 傾斜, Topographic Position Indexについては, これらの値が低下するほどティーバッグの分解が速くなることが明らかになった。今後広域拡張を目指してデータの蓄積を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初本年度の達成目標は, 割り箸の最適な設置期間決定と試験地設置・割り箸およびティーバッグの分解試験の開始のみであったが, データペーパーが公表されたためランダムフォレストモデルの作成とその検討を行うことができ, 達成度については想定以上であったと言えるため, 「おおむね順調に進展している」とした。データ取得等の全体的な進捗についも概ね計画通りであった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き, 全国の多点調査を拡張し, ティーバッグおよび割り箸の分解速度を明らかにする。さらに, ティーバッグ法について水による流亡が分解速度に及ぼす影響について明らかにする。新型コロナウイルスの影響で調査の実施が困難となっており, 当面は培養実験等の室内作業や論文執筆を前倒しで行うが, このような状況が継続する場合には, 研究期間の延長を検討する可能性がある。
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