本研究は、木材の割裂破壊耐力の推定法を提案することを目的とした研究である。木材における割裂破壊は、実際の建築物においては木造建築で一般的な接合部である鋼板挿入ドリフトピン接合部が地震時に軸力を負担した時に生じることがある。研究計画の概要は、①単一のドリフトピンによる鋼板挿入ドリフトピン接合部における割裂耐力推定法の提案とその検証と②接合部のドリフトピンが複数本となった場合の割裂耐力推定法の提案である。 2021年度は、2020年度に行った②接合部のドリフトピンが複数本となった場合の割裂耐力推定法の提案について実験を行い、引き続きデータ整理と分析を行った。 データの分析については、鋼板添板ドリフトピン接合部におけるドリフトピンが複数本配置された場合の接合具の配置と強度の関係性について、特にドリフトピン配置の接合具間距離に注目し、縁距離・材厚との複合的な要素について、耐力にどのような影響を及ぼすのかという点で進めた。 現行の基準書等で定められている接合部配置ルールは経験則による根拠不明瞭なものであったが、今回の実験・分析によって、縁距離や材厚の複合的な要因の影響があったとしても妥当であるという結果が得られ、そのルールの根拠を増強する研究になったと言える。 2020年度までに実施した研究成果及び今年度実施した分析の内容も含めて、WCTE2021(World Conference on Timber Engineering 2021)、及び2021年度日本建築学会大会(東海)において研究成果を発表した。
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