研究課題/領域番号 |
19K15885
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
松尾 美幸 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (70631597)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 経年変化 / 促進劣化処理 / 樹種依存性 / 寿命予測 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,日本およびヨーロッパで木製文化財や木工芸品,木造建築によく用いられる10樹種について,今年度は特に追加処理条件である120および180度の熱処理を進めた.処理直後に,質量・寸法・色について測定し,これら物性の処理による変化速度に樹種差があることを確認した.120, 140, 160, 180度の熱処理全てが完了し,いずれの処理温度でも,またいずれの樹種でも物性変化のトレンドは同じであることが確認された.一方,物性変化の速度は樹種により異なり,木材成分の変性・劣化のしやすさにおける樹種差を比較可能なデータが出揃った. 質量・寸法・色変化の結果を用いて活性化エネルギーを算出したところ,約120-160 kJ/molの範囲にわたり,変化速度の温度依存性が樹種により大きく異なることが示された.これは熱処理あるいは経年による物性変化を予測する際には,樹種ごとに異なる予測パラメータを求めておく必要があることを示唆する.なお,これらの成果について国内学会にて発表した(小川ら,日本木材学会年次大会,2021.3). 上述の測定が終了した試料について,含水率および寸法安定性測定のための調湿を開始し,次年度の初旬に測定予定である. また,上述の試料とは別にフランスの研究者および職人のチームより木片サンプルを受け取り,ディスカッションを開始した.これについても熱処理をおこない,処理後に物性変化を測定するとともに職人らの感覚に基づく評価を得る予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乾熱処理として予定していた温度・時間条件について,全て終了することができた.データの解析もある程度進めることができ,今後予定する湿熱処理のサンプル調整や条件設定に目星をつけられるだけの結果を得た.また,試料の前処理(調湿)に時間を要する測定(含水率)についても,前処理を開始することができた.
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今後の研究の推進方策 |
得られたデータについて解析を進めるとともに,物性変化における樹種差がなぜ生じるのかを文献や物性相互の関係から考察し,原著論文としてまとめたい.また,湿熱処理の条件を決定し,残りの試料で処理を開始する.さらに,乾熱処理のデータを用いた物性変化シミュレーションツールをウェブ等を介して公開する.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額>0の理由:COVID-19の影響で国際会議が開催されなかったことにより,外国出張旅費の支出がなかった. 次年度助成金の使用計画:研究代表者が研究機関を異動したため(名大→京大),名大に残って当該テーマに従事する大学院生と円滑に研究を進めるための費用および京大で代表者が研究に必要な物品を揃えるための費用に用いる.
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