研究課題/領域番号 |
19K15889
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
松田 陽介 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (70760867)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 木材切削 / ひずみ / 画像相関法 |
研究実績の概要 |
切削工具が木材に侵入すると刃先近傍で局所的にひずみが発生し、これがその領域の強度に対応する閾値を超えると木材は切削される。ひずみの発生を制御しないと切削が制御できず木材表面に毛羽立ちなどの加工欠点が生じる。このため、ひずみの把握と制御は加工欠点のない木材製品を得るために重要である。これまで画像相関法と呼ばれる手法で刃先近傍のひずみを測定してきたが、刃先最近傍の大変形領域のひずみは測定できなかった。本研究ではこの領域の大ひずみを明らかにすることを目的としている。 今年度は、上述の大ひずみを測定するために、従来の画像相関法プログラムを改良し、大ひずみ解析が可能なプログラムを開発した。従来の画像相関法には、大ひずみ解析時に測定精度が著しく低下するという弱点があった。従来の画像相関法では変形前後の2枚の画像を比較することでひずみを計算するが、大変形によって画素配列が大きく変化した場合、画素の追跡が正確に行われなくなることが原因であった。そこで、変形前後だけでなくその間の変形途中の画像も解析対象とし、ひずみを段階的に計算し、各段階のひずみを積算することで大ひずみを計算するよう改良した。 次に、作成したプログラムの測定精度を検証した。ヒノキの板目面を撮影した画像(幅1.4×高さ1.1 mm)に対して画像処理による疑似的なひずみ(-0.3 strain)を付与した。従来の画像相関法で疑似ひずみを測定した場合、相対誤差が-0.61%で変動係数は-48.7%であったのに対し、改良した画像相関法の相対誤差は-0.29%で変動係数は-12.4%であった。画像相関法の改良によって大ひずみ測定時の誤差やばらつきを抑制できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、木材切削時に刃先近傍で発生する大ひずみを明らかにすることである。当初、大ひずみ測定可能な画像相関法プログラムの開発と同プログラムによる木材切削時の刃先近傍の大ひずみ測定の2手順を計画していた。当年度は、大ひずみ測定用の画像相関法プログラムの開発を実施した。測定精度の検証を行い、同プログラムが刃先近傍の大ひずみを測定しうる性能を有していることを確認した。また、解析に用いる木材切削の様子を撮影した画像を取得するための高速度カメラの選定も行った。以上の進捗状況から、同プログラムによる木材切削時の大ひずみ測定は来年度中に十分達成可能である。したがって、本研究の目的は十分達成できる進捗状況であることから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、木材切削の様子を撮影した画像を今年度開発した画像相関法プログラムによって解析し、刃先近傍の大ひずみを測定することを計画している。解析対象となる画像を撮影するための高速度カメラとレンズの選定は完了している。切削工具には研究代表者の所属機関がすでに所有しているものを使用する方針である。被削材は研究代表者の所属機関がすでに所有している木材を利用する。被削材の寸法や含水率の調整には所属機関の木工機械や調湿室を利用する。切削は、材料試験機によって切削工具を被削材に向かって一定速度で送ることで実施する。画像相関法で解析する画像には被写体ブレがなく鮮明で明るいことが要求されるため、必要に応じて撮影条件(シャッタースピードや照明器具の照度など)や切削速度の調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、必要に応じて研究打合せを行うことを計画しており、そのための旅費を計上していたが、メールや電話などで対応したため、次年度使用額が生じた。これらは、木材切削の様子を撮影するための高速度カメラ用の照明器具の購入に使用する予定である。
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