切削工具が木材に侵入すると刃先近傍で局所的にひずみが発生し、これがその領域の強度に対応する閾値を超えると破壊が生じ木材は切削される。ひずみの発生を制御しないと切削が制御できず逆目ぼれや毛羽立ちなどの加工欠点が生じるため、ひずみの把握と制御は重要である。これまで画像相関法と呼ばれる手法で刃先近傍のひずみを測定してきたが、従来の画像相関法では刃先最近傍(刃先から0.1mm以内)で発生する大ひずみを測定できていなかった。本研究の目的は、従来の画像相関法を改良し、この領域の大ひずみを明らかにすることである。 今年度は、昨年度作成した大ひずみ解析が可能な画像相関法プログラムを用いて、ヒノキのまさ目面を切削したときの様子を高速度カメラで撮影した画像を解析し、刃先最近傍の大変形領域で発生するひずみを測定した。なお、切削方向は繊維方向と平行とした。その結果、切削角が40°の条件では、刃先から0.1mm以内の領域で10-20%程度の切削方向と垂直の引張ひずみが検出された。一方、切削角が70°などの大きい条件では、そのような顕著な引張ひずみは検出されなかったが、20%以上のせん断ひずみが検出された。これらの結果から、切削角が小さい条件では、繊維に沿って割裂が発生して切屑が分離するため、切削角が大きい条件と比較して逆目ぼれなどの加工欠点が生じやすいことが示唆された。切削条件に依存して切屑の分離や加工欠点の生成の原因となるひずみの種類やその大きさが異なることが確認された。
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