研究課題/領域番号 |
19K15892
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片山 智代 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (10755656)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微細藻類 / リン回収 / アンモニア / 環境負荷低減 / 廃水 |
研究実績の概要 |
本研究では、アンモニア耐性の高い微細藻類を利用し、環境中に排出されるリン・アンモニアの除去とともにリンの回収を最大化させる構築環境制御技術を確立することを目的としている。そのためにまず、多様な単藻株を確立し、アンモニア耐性を有し、且つ高いリン蓄積能を有する高性能な藻株のスクリーニングを行う必要がある。 初年度の2019年度は、マレーシアや日本の熱帯・温帯地域において海洋・河川・湖沼の表層水や栄養塩負荷の高い水域から藻類を単離し、150以上の単藻株を確立した。そして、アンモニア耐性を有する藻類を絞り込むスクリーニングを行い、約50株においてアンモニア耐性能を確認することができた。これらの内、アンモニア耐性を有するものの増殖能が極めて低い株は、本研究が目指す高性能な藻株には適さないため除外し、約20株を次のリン酸蓄積能の評価対象とした。 2020年度はリン蓄積能の評価を行うために、まず、高効率なポリリン酸の測定法を立ち上げた。これは藻類試料から抽出したポリリン酸を加水分解し、モリブデン・ブルー法による比色定量を48ウェルプレートで行い、プレートリーダーで吸光度を測定する方法である。当該方法を用いて、約20株に対してリン蓄積能の評価実験に着手した。対象株として、これまで高いリン蓄積率が報告されている既知種Parachlorella kessleriと比較しながら複数の藻株を選定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナウィルスの影響により大学での活動制限が行われ、研究活動が一時中断される期間が数ヶ月続いた。その影響により、一部実験を再度やり直すことになり、進捗状況に遅れが生じることとなった。残る実験は、リン蓄積率に及ぼす環境因子の評価、及び廃水からのリン回収率の評価である。最終年度である2021年度は、これら遅れを取り戻せるよう無駄のない実験計画を練り直し、本研究課題の完遂を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度実施予定である、廃水からのリン回収率の評価実験において、廃水培地には排水規制が未だ十分整備されていない国の一つであるマレーシアにおける産業施設の実廃水を用いる計画であった。これにはマレーシアの共同研究相手であるUniversiti Putra MalaysiaやUniversiti Malaysia Terengganuの協力が不可欠であるが、コロナウィルスの影響により大学への入校・活動制限や国内の厳重な移動制限が長期間施されている状況であり、廃水の入手が困難な状況である。先の見えない昨今の状況下で当該研究を完遂させるため、擬似廃水を用いたリン回収率の評価を行うことを検討している。擬似廃水を用いた藻類の評価実験はこれまでにも多くの既往研究で取り組まれており、実験に用いる廃水を実廃水から擬似廃水へ変更することは、本研究課題において支障はないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウィルスの影響により一時研究が中断されたこと、国内外での移動が制限されたことにより、消耗品費および旅費が一部使用されなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、当該年度に計画していた実験に用いる消耗品費、さらに廃水を用いた実験計画の変更に伴い、必要となる消耗品費に使用することを計画している。
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