2020度のキタムラサキウニを対象とした飼育実験では十分に餌の給餌を行うことが出来ず、餌料と体成分との関係をみることができなかった。本年度は再度、餌料と体成分との関係をみるために飼育試験を行った。アカウニ40個体をいれた飼育カゴを用いて、1t水槽にて飼育した。ワカメ、アオサ属、陸上植物としてタケノコ給餌区の3区を設置した。週2回給餌して飽食状態を維持し、自然海水掛け流しで2021年5月から7月まで飼育した。炭素安定同位体比分析およびDART-MS分析(JEOL社製)によりタケノコ由来の成分がウニ体内に取り込まれているかを評価した。炭素安定同位体比の結果から陸上植物であるタケノコ給餌区群において餌料として与えたタケノコと近い値にシフトしていることが示され、タケノコ由来の栄養成分が吸収されていることが確認できた。DART-MS分析により陸上植物に特異的なC16、C18が検出された(質量796.733、850.785)。 ヤマトシジミにおいて炭素安定同位体比の結果から陸上植物由来有機物の寄与が高いと推定されたヤマトシジミと微細藻類の寄与が高いと推定されたヤマトシジミの体成分をDART-MSにより調べた。測定により得られた質量データを多変量解析し、主成分分析した結果、陸上植物由来有機物の寄与が高いヤマトシジミと微細藻類の寄与が高いヤマトシジミである程度群が分かれた。さらに極端に食性が異なると推定されたヤマトシジミ(生花苗沼産と国分川産)を用いて解析をしたところ、より明確に群が分かれた。群が分かれた要因を検討するため因子分析を実施し、陸上植物由来有機物の寄与が高いヤマトシジミから陸生植物に多く含まれる成分(質量852.793)が検出された。アカウニ、ヤマトシジミともに、陸上植物を餌として取り込み、体成分へ取り込まれることを明らかにすることができた。物質の特定に至らなかった成分も多く検出されたため、今後もさらに検討を続けていく。
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