研究課題/領域番号 |
19K15906
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部) |
研究代表者 |
木村 祐貴 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境研究部、食と農の研究部及び水産研究部), その他部局等, 研究員 (90797169)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境DNA / 水産資源 / タチウオ / 魚類生態 / 瀬戸内海 |
研究実績の概要 |
近年、大阪府内におけるタチウオ漁獲量が冬季を中心に増加している。その要因として冬季海水温の上昇等の海洋環境の変化による大阪湾内での滞留期間の延長が考えられ、それに伴い食性、成熟等の資源生態特性も変化しているものと推察される。そこで本研究では、現在のタチウオの資源生態特性を明らかにすること、さらに環境DNA法を用いて大阪湾内での移動・分布の季節的変化捉えるとともに、水産資源学分野における環境DNA法の活用方策を確立することを目的とした。 ①資源生態学的調査:大阪湾で漁獲されたタチウオを2019年5月から毎月購入し測定、食性分析を行った。今回用いたサンプルを肛門前長によって小(≦220mm; n=76)中(220 ≦ 270mm; n=148)大(>270mm; n=131)の3つのサイズ帯に大別し、それぞれの餌生物重要度指数割合を算出した結果、いずれのサイズ帯もカタクチイワシがもっとも重要な餌生物であった。カタクチイワシに加えて小、中サイズではソコシラエビ等の小型甲殻類が利用されているのに対して、大サイズではマイワシなどの魚類がほとんどであった。以上のことから、本種は成長に伴って魚食性がより強まる傾向がみられた。 ②環境DNA分析:大阪湾内でタチウオが多く釣獲される秋季(2019年9、11月)に漁場で採取した環境水サンプルと、漁獲が減少し始める冬季(2019年3月;予備調査にて採取)の環境水サンプルをリアルタイムPCRを用いて分析を行った。秋季のサンプルでは各定点で高濃度のタチウオ環境DNAが検出され、釣獲状況を反映した結果が得られた。冬季は紀伊水道に南下して分布密度が低下するためか25定点中2定点で検出されるに留まった。以上のことから、今回設計した手法でタチウオ環境DNAの分析が可能であること、分布密度が高い地点であれば高濃度のタチウオ環境DNAを検出できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資源生態学的調査は全体を通して滞りなく進行中である。2020年度に予定していた炭素・窒素安定同位体比の予備分析を前倒しで実施することができた。 環境DNA分析はコンタミネーションリスクを軽減させるUNG酵素が入手困難であった影響で分析の一部が実施できなかったが、現在は十分な在庫を確保しており、2019年度サンプルとあわせて分析を再開することが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
資源生態学的調査は引き続き月例サンプルを用いた測定・分析を実施していく。炭素・窒素安定同位体比分析を用いた栄養段階の把握や耳石解析による年齢査定も行い、他海域の知見との比較によって大阪湾タチウオの生態特性解明に努める。 環境DNA分析は2020年度も隔月の採水調査を継続するとともに、未分析となっている2019年度環境水サンプルの分析もあわせて実施する。得られた分析結果によって分析手法のアップデート等を随時行う。また、実験環境下において数密度と環境DNA量の関係性を明らかにするため、タチウオを収容した大型水槽から環境水サンプルを採取し、分析を実施する。
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