研究課題
近年、大阪府内におけるタチウオ漁獲量が冬季を中心に増加している。その要因として冬季海水温の上昇等の海洋環境の変化による大阪湾内での滞留期間の延長が考えられ、それに伴い食性、成熟等の資源生態特性も変化しているものと推察される。そこで本研究では、現在のタチウオの資源生態特性を明らかにすること、さらに環境DNA法を用いて大阪湾内での移動・分布の季節的変化捉えるとともに、水産資源学分野における環境DNA法の活用方策を確立することを目的とした。①資源生態学的調査:2020年10月から2021年10月(2021年2、4、5月は欠測)に大阪湾で漁獲されたタチウオを炭素・窒素安定同位体比分析に供した。各月のδ15Nの平均値推移をみると、秋季から冬季にかけて値が上昇し(最高値12月19.11‰)、春季から夏季にかけて低下した後7月に再び上昇し、8月から9月にかけて大きく低下していた(最低値9月17.19‰)。昨年度までの結果から、紀伊水道のタチウオは大阪湾よりもδ15Nが低いことが明らかになっているため、2021年は8月以降に紀伊水道から大阪湾へ新たな個体群が進入した可能性が考えられる。②環境DNA分析:2019年6月から2022年2月にかけて隔月採取した水サンプルを用いてリアルタイムPCRによる分析を行った。くわえてサンプルのテンプレート量による検出濃度の変化を検証した。従来の分量である4μLから6μLに増量すると、4μLでは環境DNAが検出されなかった月でも反応がみられた。一方、4μL分析時にはコピー数が多かったサンプルが6μLで分析するとコピー数が大きく減少する事例があった。環境DNA濃度が高いサンプルではテンプレート量を増加させると分析が阻害され、検出精度が低下する可能性が考えられる。
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Ichthy, Natural History of Fishes of Japan
巻: 17 ページ: 16-19
10.34583/ichthy.17.0_16