研究課題/領域番号 |
19K15912
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
宮西 弘 宮崎大学, 農学部, 助教 (30726360)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環境適応 / 浸透圧調節 / 塩類細胞 / 分化誘導シグナリング / メダカ |
研究実績の概要 |
魚類の浸透圧調節は体内環境の恒常性の維持に重要であり、その機構の解明は魚類の健全な育成を目指す上で資するところが大きい。魚類は主に淡水および海水という体内とは異なる浸透圧環境に生息するため、体内のイオン・浸透圧調節が必須である。その役割を担うのが鰓に分布する塩類細胞である。本研究では、先端的な手法を駆使し、塩分調節を担う塩類細胞の分化誘導シグナリングカスケードを同定するとともに、塩分取り込み型および排出型の塩類細胞を特異的に分化させる遺伝子を同定する。これにより、塩分環境適応を支配する遺伝子を決定し、魚類における環境適応機構とその進化および普遍性の理解に繋げ、「なぜ魚類が異なる塩分環境に適応できたか?」という課題を明らかにする。さらに、淡水および海水適応マーカーとして評価し、多様な塩分環境での増養殖を活性化する技術開発に向けた基盤を確立することを目的とする。 本年度は、鰓塩類細胞の分化誘導にかかわる遺伝子群を同定するため、主に3タイプ存在する塩類細胞の内、主に淡水環境中の鰓に存在する塩類細胞の1タイプおよび海水環境中の鰓に主に存在する1タイプに着目した。各塩類細胞をレーザーマイクロダイセクション法により採取し、次世代シーケンス解析による、網羅的なトランスクリプトーム解析を行った。スクリーニングの結果、鰓塩類細胞に関わる遺伝子群を300遺伝子に絞ることができた。この遺伝子群の中から、海水型塩類細胞にかかわる遺伝子を絞り、遺伝子クローニングおよび定量PCRによる解析を行った。その結果、新規の転写因子について、海水環境で高発現することが確認でき、海水型塩類細胞の分化誘導にかかわることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特異的な細胞群におけるトランスクリプトーム解析を可能とするため、鰓塩類細胞を生体染色する系を確立した。この手法を用い、レーザーマイクロダイセクション法による、淡水型および海水型塩類細胞のみを採取し、各塩類細胞特異的な遺伝子プロファイルを次世代シーケンス解析等から得ることができた。各塩類細胞特異的な遺伝子プロファイルのスクリーニングから、海水型塩類細胞の特異的分化誘導にかかわる可能性がある遺伝子候補を同定した。
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今後の研究の推進方策 |
鰓塩類細胞の分化誘導カスケードには、複数の因子が含まれることが予想される。本年度は、おおむね順調に進展しているが、来年度、複数の分化誘導因子を同定するために、組織別発現解析を中心とした、新たなスクリーニング方法を確立し、ピックアップした300の遺伝子群についてスクリーニングを実施する必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった備品の一部を見直し、研究の発展に伴う必要備品(顕微鏡用撮影装置)へと変更する必要が生じた。さらに、大規模な次世代シーケンス解析を翌年度の使用計画とすることに一部変更する必要があったため、次年度使用額が生じた。よって、翌年度予算にて、顕微鏡用撮影装置および次世代シーケンス解析を行う計画である。
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