研究実績の概要 |
2023年度はこれまでに得られたトラフグの血漿を試料として、フグ毒結合タンパク質PSTBPの抗体を用いたウエスタンブロット法の確立を目指した。サンプル調製、SDS-PAGE、ブロッティングの条件について検討したところ、トラフグ血漿から複数のバンドが検出された。70~100 kDa程のサイズでは、既報とほぼ同サイズのバンドが得られた。一方で、それ以下のサイズでは既報よりも一つもしくは二つほど多く、バンドが検出された。既報は未成熟の個体を用いているが、本研究のトラフグは成熟個体である。この点から成熟段階の差により、発現するPSTBPのアイソフォームが変化する可能性が示唆された。成熟による変化などについては、より多くの個体を用いて詳細に検討していく必要がある。2023年度以前の研究では、成熟したトラフグの天然個体(1,500~2,000 g)におけるTTX蓄積を調査し、肝臓もしくは卵巣が主要な蓄積部位であることを明らかにした。また、養殖により作出されたトラフグのTTX非保有個体(約1,600 g)に対して、TTXの経口経管投与を行った。その結果、雌個体と雄個体の間に、体内へのTTX取り込み量では差がみられなかったものの、肝臓への蓄積量では差が認められた。また、雌個体における肝臓のTTX蓄積量の少なさには、卵巣へのTTX蓄積が関与することが推察された。今後は、これまでに得られてきた主要なTTX蓄積部位の情報とPSTBPの発現様式を突き合わせることで、トラフグ体内におけるTTXの輸送メカニズムが解明できるものと期待する。
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