マダガスカル国ではコメに偏った食事に由来した栄養バランスの不均衡がみられ、食生活の変化も殆どみられない。本研究では、マダガスカルで食生活の変化が起こりにくい要因を消費者行動面から分析し、栄養改善に実効性のある政策立案に貢献することを目的とする。マダガスカル中央高地農村での600世帯を対象とした定期的な家計調査から得られたパネルデータを活用し、さらに補足調査を行うことで実施する。 令和5(2023)年度は本研究の5年目であり、成果を出すために延長した期間にあたる。1年目には食事パターン・栄養状態・嗜好等の現状を把握した。2年目からはコロナ禍に見舞われ渡航できなくなったが、その間はカウンターパートの協力のもと引き続き現地で実施されていた家計調査に質問を追加することで対応した。4年目には研究代表者自身も渡航することができるようになり、現地でフォーカスグループディスカッションを行った。 そして5年目の今年度は、研究助手を1名雇用してデータ整理や文献レビュー等を補助してもらいつつ、成果を出すことに集中し、嗜好についてなどの論文2本を出版することができた。なお時間選好・リスク選好が食の多様性に与える影響についての論文は現在投稿中である。 食生活の変化が起こりにくい要因を主に消費者行動の面から分析したところ、栄養に関する知識は多少持っているものの、栄養価の高い食品が高価であることに加え、主観的に健康状態を良く評価する傾向や、リスクを避ける、また将来の価値を低く見る傾向が栄養改善へのモチベーションを妨げる要因と考えられた。
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