研究課題/領域番号 |
19K15930
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
宮井 浩志 山口大学, 経済学部, 准教授 (10620908)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 産直流通 / 企業主導 / インショップ型産直 / ローカルチェーン / サプライ・チェーン・マネジメント |
研究実績の概要 |
2019年度は、フードシステムにおける組織間の連携によって産直流通のネットワーク化を構築しようとする企業体の実態把握を念頭に、産直流通のシステム化に取り組む主体やこの分野に知見を有する専門家を中心に幅広く聞き取り調査、関連する文献・資料の収集および検討を行った。可能な限りの情報収集に努めたものの、結論としては主な分析対象となる徳島K社の事例の比較対象となりうる、企業主導でインショップ型産直など産直のネットワーク化に取り組む先進事例はほとんど見当たらなかった。その一方でこのことは、徳島K社の事例があらためて突出した事例であることを相対的に証明する結果ともとらえられるが、比較対象となりうる事例の情報収集については残された課題として、来年度以降も継続して行っていく必要がある。 また、来年度以降の本格的な調査に向けた、徳島K社のインショップ型産直の取り組みに関する予備調査については、徳島県内についてはキーとなる関係者との関係構築を通じた予備調査から現状把握を行うことができたが、県外進出先となる関西地域の他チェーンなどについては新型コロナウイルス感染拡大の影響で調査は延期となり、次年度以降に積み残しが生じた。 また具体的な研究実績としては、先に述べたように産直に関する広範な情報収集と文献検討については十分に進めることができ、それらの成果は業界オピニオン誌である「農業と経済」などに、2本の学術論文を発表することができた。以上から、一部作業に遅延や推進方策の変更などはあるものの、本研究は実施初年度としては概ね順調に進展しているといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、市場外流通や産直に関する幅広い情報収集と文献検討による成果を元に、2本の査読付論文をパブリッシュすることができた点で、初年度としては当初想定以上の研究成果を上げることができたことなどから、研究初年度としては概ね順調に進展しているといえる。 その一方で、可能な限り情報収集や文献検討に努めたものの、徳島の事例以外に企業主導で産直流通のネットワーク化に取り組む有力な企業体を見つけることができなかった。このことは現時点で徳島の事例が産直流通のネットワーク化において突出かつ独走していることを示唆しているともいえるが、来年度以降への積み残しとして、比較対象事例の情報収集に引き続き努める必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は先進事例である徳島県K社の取り組みを各参加主体の視点から多角的に分析しつつ、企業主導による産直流通ネットワーク化に取り組む他の先進事例との比較検討を行うことを当初に計画していた。 しかし、2019年度の研究成果などから、①研究の採択と交付時に大幅な研究費の減額があったこと、②比較対象となりうる事例が存在しないこと、③K社の事例が申請書作成時点よりも著しく進んでいたことなどが明らかとなったことなどから、来年度以降はK社の取り組みにより集中して検討を行っていく必要性が生じている。また、当初計画していた他の先進事例との比較検討に向けた情報収集についても、継続して行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度末の全世界的な新型コロナウイルス感染拡大による影響から、予定されていた学会発表については延期となった。また、徳島県K社のインショップ型産直の県外進出先となる関西地域の他チェーンにおける実態調査についても実施が困難な状況となり、当初計画通りの研究と予算執行ができなかった。 現在もコロナ禍は予断を許さない状況で、県域を跨ぐ不要不急の出張や密なヒアリング調査は困難な状況であるが、学会発表などについては開催の見込みが立っている。今後は状況を注視しながら、2019年度に積み残した学会発表と調査については2020年度内に実施する予定である。
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