近年ニホンザル等の野生動物による農作物被害が深刻化している。有効な対策には生態学的情報に基づいた計画立案および住民の主体的な関わりが必要となる。しかし現状では、地域において継続調査を行う専門家の不足、住民の意欲に関する知見の不足が課題となっている。そこで本研究は獣害対策における住民の自助・共助に関する意識の向上に対し、簡易調査手法等を用いて住民が主体的に調査に参画することが好適な影響を及ぼすという仮定に基づき実施された。住民が主体的に加害動物の調査を実施できる環境を整備することを目的に、非専門家であっても個体識別法を用いた調査を可能とする顔認識システムの開発をニホンザルを対象に行った。開発したシステムには認識率向上に寄与する画像処理手法、データ増幅手法を組み込み、それにより限定的な個体数であれば非常に少ない学習画像から個体の登録・識別が可能となった。この成果について国際学術誌に発表を行った。調査への参画による住民の意識変容については、COVID-19の影響により当初計画を変更して実施した。現地協力者と連携し遠隔での調査・対策手法の提案を実施し、並行してアンケート調査及びインタビュー調査による対策意識のモニタリングを実施した。また過去に住民と協働で対策を実施した際のデータを併せて分析を行った。これらのデータから外部の非専門家の参画による住民の自助・共助に関する意識変容について検証した結果をまとめ、学術誌へ投稿中となっている。
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