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2020 年度 実施状況報告書

有機農法と慣行農法で栽培されたリンゴ生産と農地環境の関係解析に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K15937
研究機関明治大学

研究代表者

甲斐 貴光  明治大学, 農場, 特任講師 (00806226)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードリンゴ / 土壌肥沃度 / 土壌微生物 / 物質循環 / 環境保全
研究実績の概要

日本のリンゴ栽培は、一般的に化学肥料や化学合成農薬を使用する管理システムで行われている。これらの管理システムは、効果的な土壌への栄養供給が可能となり、単位当たりの収穫量を増大させることができた。その反面、化学肥料の連用や過剰施肥、および化学合成農薬の散布は、地下水汚染、土壌団粒の減少や硬質化、土壌微生物の減少などを引き起こし、土壌環境や生態系が損なわれた。本研究では、青森県と長野県のリンゴ園で、自然農法(無肥料、無農薬)、有機農法(日本農林規格(JAS)の有機認証システムにより承認された有機肥料と農薬を使用)、環境保全型農法(有機肥料と化学肥料の併用、減農薬)、慣行農法の3箇所ずつ(合計12箇所)から土壌を採取し、土壌の生化学的特性を比較した。
有機農法で栽培されたリンゴ園土壌中の全炭素、全窒素、全リン、硝酸態窒素、可給態リン酸の含有量や、総細菌数、窒素循環活性評価値、リン循環活性評価値は、他の農法で栽培された土壌と比較して大きかった。また、平均した窒素循環活性評価値とリン循環活性評価値は、有機農法で最も大きく、慣行農法で最も小さかった。さらに、リンゴ果実の糖度、酸度、糖酸度比を分析した。その結果、糖度は有機農法の果実で最も高かったが、他の農法と比較して有意差はなかった。一方、酸度はハイブリッド農法で最も高かった。ハイブリッド農法と、自然栽培および有機農法との間に有意差が認められた。糖酸度比では、自然農法と有機農法がハイブリッド農法や慣行農法よりも有意に高かった。リンゴ果実は、糖度≧14%、酸度0.4%、糖酸度比30~40のときに最も美味しいと言われている。有機農法で栽培された果実は、推奨される「おいしい」の条件に最も近いことがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

リンゴ園土壌の全炭素と全窒素の各含有量、C/N比、および総細菌数の推奨値は、それぞれTC≧25,000 mg・kg-1、TN≧1,500 mg・kg-1、C/N比:10-25、細菌数4.5億個・g-1と報告されている(久保ら,2017)。本研究では、有機農法が推奨値を充たしていたが、自然農法、ハイブリッド農法、慣行農法のリンゴ園土壌では不足していた。これらのことから、有機農法で栽培されるリンゴ園土壌は、窒素循環およびリン循環が活発であることがわかった。また、リンゴ果実の糖度、酸度、糖酸度比の違いは、農法による土壌条件の違いによるものであることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

これまでに申請者らが明らかにした有機栽培リンゴ園の特徴は、①収量が低いリンゴ園では有機・慣行栽培のいずれにおいてもバイオマスが蓄積する、②有機栽培のリンゴ園では、土壌微生物が多くこれらの微生物活動により窒素やリンの循環活性が年間を通じて高い。しかし、慣行栽培と高品質・高収量リンゴを長年維持する有機栽培における土壌中の物理・化学・生物現象や発現メカニズムの違いは十分にわかっていない。そのため、今後の研究では青森県と長野県のリンゴ園において、土壌特性、営農管理、有機物施用履歴、気象条件が微生物群集構造に及ぼす影響を解明することを目的とする。これらのことによって、有機栽培と慣行栽培のそれぞれの土壌中での物理・化学・生物現象とその発現メカニズムを明らかにし、環境負荷軽減に向けた適正施肥量の算定が可能となる。このことは、SDGs(持続可能な開発目標)に合致し、生産から消費に至る食の安全安心の確保と有機農業の推進に大きく貢献できることが期待される。

次年度使用額が生じた理由

当初、2020年3月に開催される日本農業気象学会全国大会へ参加する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、大会が中止となったため、次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Compass Minerals Innovation Center(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      Compass Minerals Innovation Center
  • [雑誌論文] Effect of Organic and Chemical Fertilizer Application on Apple Nutrient Content and Orchard Soil Condition2021

    • 著者名/発表者名
      Kai Takamitsu、Adhikari Dinesh
    • 雑誌名

      Agriculture

      巻: 11 ページ: 340~340

    • DOI

      10.3390/agriculture11040340

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Chemical and Biological Properties of Apple Orchard Soils under Natural, Organic, Hybrid, and Conventional Farming Methods2020

    • 著者名/発表者名
      Kai Takamitsu、Kubo Motoki
    • 雑誌名

      Journal of Agricultural Chemistry and Environment

      巻: 09 ページ: 134~146

    • DOI

      10.4236/jacen.2020.93012

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] Chemical and Biological Properties of Apple Orchard Soils under Natural, Organic, Hybrid, and Conventional Farming Methods2021

    • 著者名/発表者名
      Takamitsu Kai, Motoki Kubo
    • 学会等名
      Japan Geoscience Union Meeting 2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Chemical and Biological Properties of Apple Orchard Soils under Natural, Organic, Hybrid, and Conventional Farming Methods2020

    • 著者名/発表者名
      Takamitsu Kai, Motoki Kubo
    • 学会等名
      ASA, CSSA, SSSA International Annual Meeting
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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