研究課題/領域番号 |
19K15939
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古橋 賢一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (10779739)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 微細藻類 / バイオ燃料 / 堆肥化 / 脱臭 / アンモニア |
研究実績の概要 |
家畜排せつ物の堆肥化過程からは、高濃度のアンモニアおよび二酸化炭素を含む強烈な臭気が発生する。本研究では、堆肥化から発生する臭気を、バイオ燃料を生産する新規資源作物として注目されている光独立栄養型微細藻類(Botryococcus braunii)の培養槽に通気することで、臭気中のアンモニア及び二酸化炭素を効率的に栄養源として利用すると共に、臭気を低減する技術を開発・評価することを目的としている。本年度は、アンモニアが高濃度になった際の対策を検討するため、引き続き堆肥化臭気を模したアンモニア・二酸化炭素混合空気を、半連続培養槽に通気して、新しい知見を得た。本培養系での硝酸態窒素吸収量を測定し、その吸収量の2倍量の窒素をアンモニアで供給すると、排気中および培養液中から窒素はほとんど検出されなかった。また、硝酸態窒素の供給量が2倍にすると、吸収量の限界を超えたため培養液中に窒素の蓄積が見られた。3倍量のアンモニアによる窒素供給では同様に排気や培養液中から窒素は検出されず、4倍量で死滅した。気体アンモニアをN源とすると、培養系としての窒素固定量が、一般的な緑藻のN源として用いられる硝酸態窒素よりも倍増した。藻体の増殖速度はほとんど等しかったため、藻体のN含有率が高くなったと考えられたが、藻体含有窒素量は、等倍供給時と過剰供給時では差が認められなかった。窒素は藻体の分泌物もしくは共生菌中の有機体窒素として固定されたことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アンモニアを供給した場合、硝酸態窒素よりも窒素固定量が大きくなることが実験から判明し、堆肥化臭気中のアンモニアが設計条件よりも3倍程度高くなった場合でも、バッファーとして対応できることが判明した。本来の実験計画であれば、窒素供給量の限界を見極めて、アンモニア供給制御等によって過剰アンモニアによって引き起こされる増殖阻害を回避する対応を考えていた。しかしながら、本年度の発見により、設計値の3倍量までであれば、アンモニアの供給制御等はいらず、アンモニアが排気に含まれることなく、培養系に固定できることが明らかとなった。この発見は、研究計画の進展にも貢献すると共にプロセスの大幅な簡略化につながると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
アンモニアを窒素源として供給した場合、培養系として窒素固定量を高められることが明らかとなった。今後として、小型コンポスト装置から堆肥化実臭気を供給することによって、アンモニア以外の臭気物質捕集効果を明らかにする。また、培養系として、更に単位受光面積・単位容積当たりの窒素固定量を高めるため、アンモニア供給による窒素固定量向上のメカニズムを解明して更なるNH3吸収能を高めた培養系を確立することを目指すと共に窒素含有率が高くアンモニア捕集効果が高い低pH域での培養も可能な藻種の利用も合わせて検討する。
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