研究課題/領域番号 |
19K15943
|
研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田村 匡嗣 宇都宮大学, 農学部, 助教 (60750198)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 糖質消化性 / ソバ / 大麦 / β-グルカン / ポリフェノール / in vitro模擬消化試験 |
研究実績の概要 |
糖質を含む食品の摂取は,腸管内におけるデンプンからグルコースへの加水分解によるグルコース量増加速度の上昇,すなわち急激な血糖値の変化を引き起こす.この反応は,2型糖尿病,高脂血症および心疾患などの生活習慣病の発症と密接に関係する.このため血糖値の上昇を,ヒトの血液より算出するグリセミック・インデックス(GI)や,ヒトの消化器官をガラス器具内で再現したinvitro模擬消化試験で算出する推定GI(eGI)による評価が欧米を中心に進められている.食物繊維やポリフェノールなどは,糖質消化性(血糖値の変動)を緩やかにする機能性が明らかにされ,日本食の消費量の中で重要な位置を占める玄米,大麦,ソバおよび茶などは,これらの機能性成分を豊富に含むことから世界的に注目されている.一方で,工学的な調製および加工操作もまた糖質消化性に影響する.本研究は,日本食の中で消費量が多い大麦,ソバおよび茶を試料とし,植物固有の遺伝的性質と加工操作が糖質消化性に与える影響の検討を目的とした.R2年度は,1)品種の異なる大麦から餃子皮を作製し,その糖質消化性の比較,検討,2)規格内ソバと規格外ソバからガレットを作製し,その糖質消化性の評価と検討,をそれぞれ実施した.その結果,以下のようなことが明らかとなった.1)大麦餃子皮の糖質消化性は,アミロース量に影響される可能性が示唆された.2)昨年の研究と同じように,ガレットの糖質消化性は規格外ソバが規格内ソバよりも高くなった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R2年度は,1)品種の異なる大麦(サチホゴールデン,もち絹香,ダイシモチ)から餃子皮を作製し,その糖質消化性の比較,検討,2)規格内ソバと規格外ソバからガレットを作製し,その糖質消化性の評価と検討,をそれぞれ実施した.その結果,1)大麦餃子皮の糖質消化性は,総ポリフェノール量やβ-グルカン量よりもアミロース量に影響される可能性が示唆された.2)昨年の研究と同じように,ガレットの糖質消化性は規格外ソバが規格内ソバよりも高くなった.さらに糖質消化性に及ぼす影響は,総ポリフェノールや粘性だけでは説明できないことが明らかとなった.一方,R2年度の研究結果と比較すると,調理方法によって,ソバの糖質消化性が変化することが明らかとなり,その原因を考察した.
|
今後の研究の推進方策 |
R3年度は,大麦から焼きそばを作製し,その糖質消化性を調査,検討する.一方,茶の研究は,新型コロナウイルスの感染拡大による影響で,試料や加工方法の変更せざるを得ないため,当初の予定を一部変更する.具体的には,産地の異なる同一品種の茶を試料として用い,糖質食品の消化性に与える影響を調査する予定である.
|