本研究では,”水”が個葉の光合成能力に与える影響を解することを目的としている.研究内容は,大きく分けて,落水と再潅水のタイミングおよび水ストレスレベルがイネ個葉の光合成能力(最大光合成速度,最大カルボキシル化速度,最大電子伝達速度)に与える影響の評価と,得られた結果に基づく効果的な水管理の在り方の提案である.そのため,落水と再潅水のタイミングおよび土壌水分ストレスレベルに応じた計10処理区を設定し,1) ファイトトロンでのポット栽培とガス交換測定,2) 生育ステージごとにおける水ストレスレベルがイネ個葉の光合成能力に与える影響の定量的評価と光合成および収量の観点に立脚した水管理の効果検証を実施を目指した.2020年度には,水ストレスがイネの生長や光合成能力,収量にどのような影響を与えるのかを調べるため,ファイトトロンでのイネ栽培を実施し,生育調査,ガス交換測定,収量調査を実施した.その結果,水ストレスは光合成活動を大幅に抑制し,水ストレス期間中の穂の登熟は水ストレス期間前の貯蔵同化物質が使われること,生育期間によって水ストレスを受ける影響は異なり,出穂前であれば水ストレスによって登熟機能が相対的に抑制される可能性が低いことなどが明らかとなった.また,水ストレス下でイネ栽培を実施する場合,元肥を抑制して,分げつ数を減らし,出穂前に断水処理を実施することで水利用効率や窒素利用効率を高めた資源節約型の水稲栽培が可能となることがわかった.また,これらの結果をまとめ,論文の作成し,国際誌への投稿を行った.
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