オートラジオグラフィ法は、放射性同位元素(RI)を含む試料をイメージングプレート(IP)等に密着させ、その濃度分布を可視化する手法である。この手法は植物研究分野においても広く利用されているが、厚みや複雑な構造を持つ被写体を撮像する場合、IPへの接触がうまくできず像がぼけてしまっていた。本研究では試料とIPとの間に距離がある場合でも感度や分解能の低下を抑制可能なオートラジオグラフィ技術の開発を行う。具体的には、RIが放出するベータ線の進行方向を磁場で制御する。磁場中の荷電粒子は磁力線にって螺旋運動する。よって、試料とIPとの間に適切な磁場をかけることで、例えそれらが密着していない場合でも、感度や分解能の著しい低下を抑えたオートラジオグラムが取得できる。 1年目である令和元年度は、シミュレーションによる検証や、本技術の実証実験を行い、本技術を用いることで感度や分解能を落とさず撮像可能なことが示唆された。 2年目である令和2年度は、磁場強度の異なる磁気回路を用いた実験において、磁場強度が強ければ強いほど感度・分解能の低下を抑制できることを確認した。また、試料とIPとの間の距離を変化させて実験を行った結果から、試料とIPとの間の距離をに対する感度・分解能の依存性は確認できなかった。さらに新技術説明会にて本成果を発表した。 3年目である令和3年度は、大型磁気回路の製作を行う予定であったが、予算との折り合いから当初計画を変更し、投影像の拡大・縮小が可能かを検討するための磁石を製作した。 最終年度である令和4年度は、製作した磁石を用いた検証実験を行った。また、実際に植物を用いたイメージング実験を行った。実験ではCs-137を吸わせたシロイヌナズナの葉を撮像対象とし、650mTの磁場の有無による投影画像の違いを調べた。撮像の結果、植物に対しても本技術が有用であることが示唆された。
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