研究課題/領域番号 |
19K15949
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中山 真由美 東北大学, 生命科学研究科, 博士研究員 (70814317)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 環境応答 |
研究実績の概要 |
環境ストレス応答における液胞の役割解明の糸口として,シロイヌナズナ根の液胞動態変化に伴う物質輸送を明らかにすることを目的に,(1),(2)の研究を実施した。 (1) 根冠プロテオーム解析による液胞動態変化に関与するタンパク質の同定: これまでにシロイヌナズナ根冠のプロテオーム解析として,予備検討で取得していた水分勾配刺激処理時のプロテオーム解析データに既知のマイクロアレイ解析データを加えて検証し,根冠が環境ストレスを回避し液胞が収縮する際に特異に機能する可能性のある候補タンパク質リストを作成,トランスポーターまたは膜局在と予測される8タンパク質を(2)の候補遺伝子として活用した。加えて,浸透圧刺激による液胞動態変化時の根冠プロテオーム解析を複数回行い,同様に候補タンパク質リストを作成し,新たに(2)の候補遺伝子として活用した。 (2) 液胞への取り込みおよび排出に関わるトランスポーターの探索と輸送基質の同定: これまでに公共データベース等を活用して,シロイヌナズナにおいて液胞膜局在,あるいはトランスポーターとしての機能が予測される10遺伝子を探索モデルとし,(1)の候補遺伝子と共に,大腸菌および出芽酵母での過剰発現系構築を進めた。大腸菌では,発現を確認した候補について,それらの培養液を質量分析することで輸送物質の推定ができている。一方,出芽酵母では,候補遺伝子を過剰発現する形質転換体の液胞動態の形態学的な解析を進めたところ,前年度までにいずれの形質転換体も致死性が高く,発現量の調節等の考慮が必要であることが明らかとなったことから,発現系として新たに‘well-tempered’ controllerによる転写制御システムを導入し,候補タンパク質の最適発現量の検討を進めている。引き続き,これらの形質転換体を用いて,液胞動態に変化をもたらす因子の絞り込みと検証を進める。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
(1) 計画通り再現性を検証するプロテオーム解析によって候補タンパク質リストを作成できたが,前年度までの質量分析装置故障の影響により,リストの作成時期が遅延した。 (2) (1)の遅延に伴い,候補遺伝子の解析が遅延した。先行する探索モデル候補遺伝子については,大腸菌では計画していた解析は順調に進んでいるものの,出芽酵母では新たな発現系を構築する必要性が生じ,また,それらの発現量の最適化に時間を要している。加えて,候補の特性から派生した解析や検証を行う研究協力先での研究実施が今年度も困難であったため,次年度に計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 根冠プロテオーム解析による液胞動態変化に関与するタンパク質の同定: 引き続き,作成した液胞動態変化に関与する候補タンパク質リストの有効性については,(2)で得られた結果をフィードバックすることにより検証し,必要に応じて,再現性検証のためのプロテオーム解析を行う。 (2) 液胞への取り込みおよび排出に関わるトランスポーターの探索と輸送基質の同定: 新たな出芽酵母発現系での候補タンパク質の発現量の最適化を優先し,それらの発現体を用いることにより,候補タンパク質による基質の取り込みと排出の有無を確認し,蛍光試薬等を用いた液胞動態の形態学的な検証を進める。 候補にはトランスポーター以外の膜タンパク質も含まれており,また液胞の動態変化には多くの膜タンパク質や因子が関わるため,これらの関連因子も考慮する。 (1),(2)の推進により,液胞動態に変化をもたらす因子を絞り込み,液胞で機能するトランスポーター,膜タンパク質を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(1)で作成した候補タンパク質リストの精査のため,次年度にもプロテオーム解析の実施を計画しており,そのための物品費,装置使用料が次年度使用額として生じた。 (2)で2019年度末から実施を予定していた研究協力先での研究実施が新型コロナウイルスの影響で今年度も延期されたため,これらにかかる旅費,物品費が次年度使用額として生じた。次年度に延期となった研究協力先での研究実施を計画している。加えて,新たな出芽酵母発現系の最適化には検討に時間を要するため,これらの実施にかかる物品費,装置使用料が次年度使用額として生じた。
|