研究課題/領域番号 |
19K15950
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
大出 亜矢子 北里大学, 獣医学部, 助教 (00814203)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | Unmanned Aerial Vehicle / 泥炭分解度 / 非計量多次元尺度構成法 / 強熱減量 / C/N比 |
研究実績の概要 |
2019年度は、無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle(UAV))に搭載したセンサによる検知可能な泥炭地環境内の変化量を整理し、泥炭湿地研究において適用すべき空間情報の取得方法および分析方法の標準開発に取り組んだ。具体的には泥炭地環境内の変化量とは、地表面の池塘の水質、植生および泥炭分解度を対象とした。融雪後の2019年6月から10月の間に取得した多時期の空撮画像を用いて湿地内の池塘面積の増減量を明らかにし湿地内の地表面の水の空間的挙動をとらえた。また池塘の水質の分布に着目し、UAVによる簡易な水質評価モデルの開発に取り組んだ。複数のバンドの分散からpHがある程度推定可能であることが示唆されたものの、精度向上が課題として示された。また、UAV搭載センサにより取得した情報を用いた植生分類法を検討した。具体的には、非計量多次元尺度構成法(Nonmetric Multidimensional Scaling(NMDS))により複数の実測指標から植生を分類し、UAVの空撮画像から分類に有効な因子を抽出した。さらに合成開口レーダの差分干渉波解析により広域の泥炭土壌の挙動をとらえ、そのデータとの照合のため、特徴的な植物群落から泥炭を採取し、分解度指標として強熱減量とC/N比を測定した。過去の湿地内の改変履歴による泥炭層の分解状況への影響を把握するため、排水路及び農道から採取地点への距離と、分解度指標との関係性を検証した。この結果、田代平湿原においては、ミズゴケ植生の泥炭において最も顕著に排水路から距離が近くなるにつれ泥炭の分解が進んでいることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度はおおむね予定通り、空間情報の取得方法および分析方法の標準の開発に取り組むことができた。この結果は学術雑誌への投稿を進めている。また2020年度は新たに衛星画像の解析結果とフィールドで取得したサンプルの分析結果とを合わせて分析を進め、論文として公表をする予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度の結果から整理したゾーン別に現地での試料採取を行う。採取した試料から、より詳細な土壌分解度指標を測定し取得した空間データとのマッチングを行う。また、対象地域周辺の産業連関表や環境統計データ等を整理し、解析データと統合するデータベースのプラットフォームを構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初、初年度に衛星画像や新たなセンサの導入を予定していたが、範囲が広大であるため、初年度は対象エリアを予め絞り込むことを目的に、無人航空機による空撮データの取得を主体とし現場での試料採取や分析に注力した。結果として大まかなゾーニングが可能となったため、エリアを絞り込み2020年度に予算を執行する予定である。
|