研究課題/領域番号 |
19K15951
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
大久保 倫子 東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (80761254)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 色覚 / 色識別 / ニホンジカ / 鳥獣害対策 / エゾシカ / 学習 |
研究実績の概要 |
ニホンジカの持つ色覚特性は、ヒトの色覚異常の分類のうち、L錐体が機能していない1型2色覚に類似しているのではないかという仮説を検証するために、①行動学的アプローチに基づく、エゾシカを用いた色の識別実験、②エゾシカにおける混同色線の作製、③さらにはエゾシカが識別しやすい色の組み合わせを利用した視認性や忌避性の調査という3課題を設定した。 1年目に実施した①エゾシカを用いた色の識別実験では、複数の色の組み合わせにおいて、識別できる個体もいればできない個体もおり、個体によって結果が異なっていた。そこで、個体差の大きかった色の組み合わせに着目し、令和2年度では、学習機会を重ねることにより、エゾシカの色識別能力が向上するかどうかを検討することとした。 個体差の大きかった色の組み合わせを再トレーニングし、識別実験を実施した結果、1年目では識別できなかった複数の色の組み合わせのうち、学習を重ね2年目に識別できるようになった色の組み合わせが存在した。さらに正解までの試行回数の短縮も観察された。よって、ヒトと同様に、学習を継続することによって色の識別能力は向上することが示唆された。再学習によっても識別できない色はエゾシカの混同色線上の色の組み合わせであると考えられる。 しかし、学習の進行は個体差が大きいこと、特に雄シカは繁殖期になると行動が変化し不安定になることなどから、実験の時期を考慮しつつ、実験の個体数を増やすことが望ましいと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は新たな個体を供試して実験を行う予定であったが、コロナウイルス感染症対策として、キャンパス内への立ち入りが制限されており、新規個体で十分なトレーニングを積むことができなかった。 そこで馴致が充分に行われている個体を用い、学習継続による識別能力の変化を検討することに切り替えた。しかし色覚は個体差が大きく、更なるデータの蓄積が必要であることから、次年度は再度新規個体のトレーニング、実験の遂行を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は前年度できなかった新たな個体を実験に供し、引き続きデータの蓄積を行い、これまでのデータをまとめて、②エゾシカにおける混同色線の作製に取り組む。 同時にこれまでの実験から、エゾシカが認識しやすいと考えられる色の組み合わせを、実際の忌避装置に搭載し野外に設置することで、野生のエゾシカの行動を観察する。 さらにウマにおいては、水桶の色を視認性が良い色にすることで飲水量が増えることが報告されている。シカにおいても、色の視認性が水槽や飼槽の選択に影響するのか調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度前期は研究を進めることができず、当初の計画よりも消耗品の使用が抑えられたことから次年度使用額が生じた。 生じた次年度使用額については実験に使用するエゾシカの飼養費、データ計測等、次年度の研究遂行に充当する。
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