研究課題
食肉の質を向上させるためには、遅筋型と速筋型で大別される骨格筋細胞の筋線維型(筋タイプ)を制御する必要がある。成熟した個体では、筋線維に接着した運動神経によって筋タイプが制御される神経刺激作用が構築されるため、筋タイプの大幅な変換は困難であると考えられてきた。しかし我々は、骨格筋の肥大や再生に寄与する筋幹細胞(衛星細胞)が互いに融合して、新生筋線維(筋管)を形成する際、運動神経の影響を受けずに自律的に筋タイプを制御する“コミットメント(初期決定)機構”に着目している。最近では、遅筋または速筋の各筋部位から単離した衛星細胞は、それぞれで異なる細胞外因子を多量に合成および分泌するシステムが存在することを見出しつつある。そこで本研究課題では、衛星細胞による筋タイプ初期決定機構の分子メカニズムを解明するため、“1. 遅筋型筋線維または速筋型筋線維それぞれに局在する衛星細胞の特異性”、および”2. 筋部位内で衛星細胞を取り巻く細胞外環境による影響”の2パターンからアプローチをする。2020年度の実績は以下の通りである。テーマ1.に関して、野生型マウスを用いて筋タイプを特定せずに単一筋線維を摘出して培養し、その過程で遊走する衛星細胞を採取した際には、純度約95%以上の培養系の確立ができた。しかし、各筋タイプに特異的な単一筋線維に局在する衛星細胞の採取の際には、単一筋線維が充分に摘出できないため検証に必要な細胞数が確保できない問題点が浮上し、衛星細胞の動態変化の追求まで至らなかった。続いてテーマ2.に関して、培養基質として弾性率をコントロールできるアクリルアミドゲルを用いた培養プロトコルを確立し、衛星細胞へ物理的刺激を与えた際の筋管の筋タイプ制御に与える影響を調べた。その結果、弾性率の違いに応じた大幅な筋タイプの変化は認められないという新知見が得られた。
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The Journal of Biochemistry
巻: 169 ページ: in press
10.1093/jb/mvab030
https://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K007667/