本研究課題の目的は、反芻胃内のフラボノイド分解性新規細菌を分離培養することである。フラボノイドは反芻胃内微生物により速やかに分解されることが知られているが、フラボノイド分解能を有すると報告された反芻胃内微生物種はごくわずかである。申請者はこれまでにフラボノイド含有素材により未分類のルーメン細菌種の存在比が高まることを明らかにしている。本研究では、古典的な嫌気的集積培養法と最先端の遺伝子解析技術の両方を用いることで、フラボノイド分解に貢献する細菌種を特定し、新規細菌種の分離培養を試みる。 分離株の機能性を評価し、反芻家畜を対象とした「新規シンバイオティクス」の開発に向けた候補株の特徴付けおよび選定を行う。 2021年度は、2019年度、2020年度に特定した、複数のフラボノイド分解性細菌群の候補菌群を標的とし、分離培養試験を行った。嫌気培養装置を用いて、各種フラボノイドを基質とする培地を作製し、嫌気的集積培養をおこなった。集積培養物をイノキュラムとして嫌気的に調製した希釈液により段階希釈し、10倍系列でのイノキュラム希釈液を作製した。それぞれの希釈段階の菌液を同様の組成の培地に接種したのちにロールチューブを作製し、39°Cで1日から10日培養を続け、嫌気的条件下で細菌株のコロニーを形成させた。シングルコロニーを釣菌したのちに単離株を培養し、培養後の菌液をサンプリングして顕微鏡により形態およびグラム染色性を観察するとともに純菌かどうかを評価した。また、分離株からDNAを抽出し、16S rRNA遺伝子の部分配列の塩基配列を解読することで分類群の特定を行った。解析の結果、Bacteroidetes門 Bacteroides属に属する細菌株1菌株を同定した。
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