本年度は、分娩2週間前から母豚10頭に基礎飼料(C区)とミールワーム飼料(M区)を給餌し、娩出された子豚は28日齢時に各腹6頭以上解剖し、腸管の組織形態解析、腸管粘膜での糖分解酵素活性解析、子豚盲腸内容物および母豚糞便中における短鎖脂肪酸濃度測定および細菌叢解析、IgA濃度測定、血漿中のIgG濃度および血液性状、脾臓および血液中のリンパ球サブセットを解析した。 その結果、哺乳子豚の日平均増体重に有意差は見られなかった。リンパ球サブセットの結果では、脾臓中のT細胞およびヘルパーT細胞、キラーT細胞割合が有意に増加した。また、子豚の盲腸内細菌叢では、2群間の多様度の違いを示すβ多様性では種の存在量を考慮するweighted UniFrac距離と存在量を考慮しないunweighted UniFrac距離に有意差がみられた。属レベルでの占有率の比較の結果から、M区で病原菌として認識されているEscherichia-shigella属が有意に低い値を示し、腸管内で免疫活性に関与することが示唆されているBacteroides属が有意に高い値を示した。 本研究では、昆虫粉末含有飼料を母豚へ給餌することによって子豚の盲腸内細菌叢が影響を受ける可能性が示された。また、M区での脾臓中T細胞が増加したことは昆虫粉末含有飼料を母豚へ給餌することで、哺乳子豚の免疫機能が活性化される可能性が考えられる。結果として、ミールワーム粉は魚粉の代替飼料原料として2%程度であれば、哺乳子豚に悪影響を及ぼすことなく利用可能であると示唆された。しかしながら、昆虫粉末を母豚に給仕することでどのように哺乳子豚の免疫が活性化されたかについては今後詳細に作用機序を解明する必要がある。
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