研究課題/領域番号 |
19K15964
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
佐々木 羊介 宮崎大学, 農学部, 准教授 (60704674)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 養豚 / ビッグデータ / 疫学 |
研究実績の概要 |
本研究では「養豚生産記録のビッグデータを活用して、異常事態を早期に検出するシステムを開発すること」を目的として実施している。当該年度では、宮崎県内に所在する複数の養豚生産農場を対象として、分娩成績・離乳成績・事故や死亡の発生に関する情報を収集し、母豚のグループシステムに伴って、各種成績のロット間における成績変動の経時的変化に関して調査を行った。母豚のグループシステムとしてウィークリーシステムを導入している農場では、1週間毎の各種成績を対象として、群の産次構成と成績のバラツキを算出した。各週の分娩頭数の平均と比較して、全体の約3割の週で、平均の分娩頭数よりも1割以上の増加または減少がみとめられた。産次構成に関して、各週における群の平均産次にはあまりバラツキがみられなかったが、各週における初産母豚割合や高産次母豚割合には大きなバラツキがみられた。分娩成績では、一腹当たり生存産子数は各週におけるバラツキがあまりみられず、1割以上増加または減少した週は1週のみであった。一方一腹当たり死産子豚数には大きなバラツキがみられ、全体の約3割の週で、平均の分娩頭数よりも1割以上の増加または減少がみとめられた。離乳成績では、哺乳中事故率は各週におけるバラツキがあまりみられず、事故率の大幅な増加がみられた週はなかった。一方一腹当たり離乳子豚数は大きなバラツキがみられた。これは哺乳中事故率ではなく、一腹当たり生存産子数のバラツキの影響と考えられる。群の産次構成と成績のバラツキの関連性に関して、初産母豚割合や高産次母豚割合は分娩成績・離乳成績とあまり関連がみられなかったが、群の平均産次が増加するにつれて、一腹当たり生存産子数や一腹当たり離乳子豚数の減少および一腹当たり死産子豚数および哺乳中事故率の増加がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度では、本調査として、宮崎県内に所在する複数の養豚生産農場を対象として、分娩成績・交配成績・事故や死亡の発生に関する情報を収集し、母豚のグループシステムに応じた分析方法の実施や、疾病発生や生産性の大幅な低下などの異常事態を定義づけすることを予定していた。現在までに、情報収集や分析方法の実施に関して、おおむね順調に進展している。分娩成績としては、一腹当たり生存産子数、一腹当たり死産子豚数を対象とした。これらの成績に関しては、ウィークリーシステムの農場では群間において大きなバラツキがみられなかったことより、今後調査を行う際には、一腹当たり総産子数との関連性も考慮する必要がある。また、離乳成績としては、哺乳中事故率、一腹当たり離乳子豚数を対象とした。調査農場によっては、哺乳中事故率のバラツキがあまりみられていないケースがあることより、異常事態の定義に関して、哺乳中事故率だけでなく、他の項目に関しても検討が必要である。特に、哺乳中の死亡原因に関しても考慮する必要がある。また、群の産次構成に関して、今回は分娩成績を対象としたため、初産母豚割合や高産次母豚割合を対象として調査を行った。これら2つの指標に関して、群間におけるバラツキがみられたものの、分娩成績や離乳成績との関連性はみられなかった。今後は産次構成の指標をいくつか加える必要がある。また、今後の調査の実施予定農場に関する生産性調査を行い、繁殖成績・群成績・肥育成績の定量を行った。これらの農場を対象として、今後調査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の目標として、様々な母豚のグループシステムを対象として解析を行っていく。その中で、群単位の解析方法に関して検討し、異常事態の発生に関する定義を構築する。また、定義された異常事態の発生に寄与する特徴量の抽出を行うために、群の産次構成や飼養管理の情報などを用いて解析を行う。得られた特徴量を用いて、異常事態を検出するためのアルゴリズムの開発を行う。これらの作業が順調に進んだ場合、対象を全国の複数の農場に広げて、解析を進めていく。対象予定の農場として、現在までに生産性調査を行った農場とする。これらの農場における繁殖成績・群成績・肥育成績を用いて、解析に適した農場を検討する。特に、異常事態の発生に寄与する因子を明らかにするためにも、繁殖成績では哺乳中事故率を、肥育成績では肥育中事故率を指標として用い、これらの指標が高い農場を優先的に選定する。また、群成績に関して、可能な限り飼養規模が異なる農場を選定する。特に母豚の飼養規模では、100頭未満の小規模農場や、1000頭以上の大規模農場を優先的に選定する。母豚のグループシステムに関して、ウィークリーシステムだけでなく、スリーセブンシステムや連続飼養の農場も解析に加えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせや農場視察などに計上していた旅費に関して、新型コロナ感染症の流行に伴う移動自粛の影響に伴い、当該旅費が予定していた金額よりも少なくなった。また、研究成果の報告のために計上していた学会参加旅費および参加費に関しても、同様に新型コロナ感染症の流行で、学会が中止や延期またはオンライン開催になり、当該費用が予定していた金額よりも少なくなった。 今年度は新型コロナ感染症の流行を見極めた上で、可能なタイミングにおいて研究打ち合わせや農場視察を行うことにより、昨年度に予定していた計画事項を実施する予定である。また、学会参加旅費および参加費に計上していた金額の残額に関して、研究成果の論文投稿が予定よりも多くなる見込みであり、投稿可能な論文数が予定よりも多くなる予定であるため、投稿に必要な英文校閲や論文掲載費に助成金を使用する予定である。
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