本研究では「養豚生産記録のビッグデータを活用して、異常事態を早期に検出するシステムを開発すること」を最終的な目的として、養豚生産記録を活用した6つの分析を実施した。分析1では豚流行性下痢(PED)発生農場における母豚の流産リスクを評価し、PEDの発生は流産の発生割合および流産リスクの両方を増加させること、また母豚への馴致の実施は、流産リスクを増加させていたことを明らかにした。分析2ではCSF(豚熱)発生が養豚生産活動に及ぼした影響を調査し、CSFの発生に伴う殺処分や移動制限などの防疫活動は養豚生産活動に対して多大な影響を及ぼしており、殺処分を実施した農場では農場再建に向けて苦労した点が多く見受けられたことを明らかにした。分析3では養豚生産農場における繁殖成績および肥育成績の定量化を行い、南九州地域に所在する養豚生産農場の長期的な繁殖成績および肥育成績の経時的変化を明らかにした。分析4では里子処置が離乳時の子豚成績や離乳後の繁殖成績に及ぼす影響を評価し、研究対象農場で実施していた里子処置は離乳時成績および離乳後成績に対して負の影響を与えないことを明らかにした。分析5ではピッグフローを定量化するための判定ツールを開発し、分娩舎および離乳舎におけるオールイン・オールアウト(AIAO)実施の可否を判定するツールの開発および本ツールを用いたAIAO実施に向けた改善案の補助材料提示を実現した。分析6ではグループシステムに応じた生産性分析の手法を確立し、母豚の群構成の情報を活用した生産性分析の手法を確立した。以上の分析を通じて、養豚生産記録のビッグデータを活用して、異常事態を早期に検出するシステムを開発することができた。
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