研究課題/領域番号 |
19K15970
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大菅 辰幸 北海道大学, 獣医学研究院, 特任助教 (70816470)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 左心室充満圧 / 心エコー / 左心房 / カップリング / strain |
研究実績の概要 |
2019年度は、まず、心エコ-による左心房-左心室カップリングの推定の検査再現性を健常ビーグル犬を用いて評価した。その結果、左心房-左心室カップリングの推定は日内再現性、日間再現性ともに臨床応用するのに適したものであることが明らかとなった。 続いて、僧帽弁閉鎖不全症(MR)の犬の臨床例を対象として横断研究を行った。健常犬47頭(対照群)、軽度のMRを有しうっ血性心不全を未発症の犬33頭(軽度MR群)、重度のMRを有するもののうっ血性心不全を未発症の犬30頭(重度MR群)、重度のMRを有しうっ血性心不全を発症した犬17頭(心不全群)を組み入れ、各犬で心エコーにより左心房-左心室カップリングの推定を行った。その結果、重度MR群においては対照群、軽度MR群と比較して左心房-左心室カップリングが悪化していた。さらには、心不全群においては他の3群よりも左心房-左心室カップリングが悪化していた。また、左心房のサイズ、僧帽弁血流のE波速度、左心房ストレインを含めた従来の心エコー左心室充満圧指標よりも左心房-左心室カップリングは優れた精度でうっ血性心不全の有無を鑑別することができた。 上記の結果から、犬のMRにおいては病態の進行に伴い左心房-左心室カップリングが悪化することが明らかになった。また、心エコーにより推定した左心房-左心室カップリングは従来の心エコー指標よりも優れた精度で左心室充満圧を推定できる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度には、心エコーによる左心房-左心室カップリングの推定の検査再現性が臨床応用に適したものであることを明らかにでき、その後の研究を行うための足掛かりとなった。また、MRの犬の症例数を想定以上に順調に蓄積することができた。そのため、心エコーにより推定した左心房-左心室カップリングがMR犬における左心室充満圧の推定に有用であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、2019年度に組み入れたMRの犬の臨床例の追跡を行う縦断研究を行う予定である。この研究により、心エコーにより推定した左心房-左心室カップリングが心臓薬を用いた内科的治療による左心室充満圧の低下を捉えることができるかを検討する。また、MRモデル犬を作製し、心エコーにより推定した左心房-左心室カップリングと左心室充満圧の実測値の関連性を調べる実験研究を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在飼育中の実験動物を用いて心エコーの検査再現性を調べる研究を実施することができ、疾患モデル動物を作成するための実験動物の購入が次年度に繰越となったため。
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