研究課題/領域番号 |
19K15971
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 東 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (00754532)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ソノポレーション / 膀胱注入療法 / ピラルビシン / 非筋層浸潤膀胱癌 / マイクロバブル |
研究実績の概要 |
前年度には、抗がん剤を超音波とマイクロバブルでドラッグデリバリーするソノポレーションを3次元培養系に使用し、細胞の薬剤取り込み促進を確認した。これらの知見に基づき、正常な犬において安全性の評価を行なった。 健康なビーグル犬を対象に、膀胱内ソノポレーション1回治療と9回治療の2プロトコール(各3頭)を実施した。鎮静下の犬の膀胱に尿道カテーテルを留置し、生理食塩水20 mLに溶解した抗がん剤ピラルビシン塩酸塩超音波造影剤ソナゾイドを膀胱内に注入した。注入後速やかに超音波診断装置の造影対応リニアプローブを用いて超音波を1分間照射した。30分後に注入した薬剤を抜去し、泌尿器科用灌流液ウロマチックSにて回洗浄した。1回投与プロトコールでは膀胱注入ピラルビシンの血中移行の有無を評価するために経時的な採血を行った。9回投与プロトコールでは膀胱注入ピラルビシンの血中移行の蓄積を評価するために、毎回の処置前後に採血を行なった。ピラルビシンの定量には液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析計を用いた。なお、本動物実験は「国立大学法人北海道大学動物実験に関する規程」(承認番号20-0081)に基づき適切に行われた。 1回および9回投与プロトコールの全てにおいて、血中ピラルビシンは検出限界以下だった。9回投与プロトコールでは局所的な副作用として膀胱刺激症状が2頭で確認されたが、全身的な副作用を示めす症状は発現しなかった。 分子量の比較的小さい物質は膀胱粘膜から血中へ移行することが知られているが、今回の正常な犬の膀胱粘膜ではピラルビシンの血中移行は検出限界以下で、膀胱内注入療法に超音波照射と気泡による薬物送達を組み合わせても、全身的な副作用が問題になることはないだろう。今後、腫瘍罹患症例において腫瘍組織への取り組み促進を確認し、膀胱癌への治療応用を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目の本年度には当初の予定通り、正常な犬を対象に抗がん剤の膀胱内ソノポレーションを行い、その安全性を検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
抗がん剤の膀胱内ソノポレーションは安全に実施できることが示されたことから、今後、臨床研究申請を行い、犬の膀胱癌治療への応用の可能性を追求する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験に関連する諸経費が当初見積もりと異なったため、次年度使用額が発生した。発生した使用額は次年度の消耗品費として使用する。
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