二種類のウマトリパノソーマ症(スーラ病及び媾疫(こうえき))は、近縁な二種類の動物トリパノソーマであるエバンストリパノソーマ(Trypanosoma evansi)及び媾疫トリパノソーマ(T. equiperdum)によって引き起こされる致死的な原虫病である。主に血中に寄生する前者に対しては複数の治療薬による治療法が確立されている。一方で主に生殖器粘膜や組織中に寄生する後者に対する有効な治療薬・治療法は確立されていない。そのためこれら二種類のウマトリパノソーマ症を迅速に鑑別することが重要であるが、非常に近縁なこれら二種類のウマトリパノソーマを鑑別する寄生虫学的・血清学的・分子生物学的な鑑別診断法は確立されていない。本研究ではウマトリパノソーマ症の鑑別診断法を確立することを目的として、リファレンスとなるウマトリパノソーマ症の病原原虫の比較ゲノム解析による二種類のトリパノソーマを鑑別可能な遺伝子・核酸配列領域の特定を試みた。本年度は昨年度導入したベルギー熱帯医学研究所から導入したリファレンス株及び我々がモンゴルで株化したトリパノソーマの培養馴化を行いDNAを精製した。またさらに鑑別診断に重要な情報となる動物トリパノソーマ症の疫学状況の収集と解析も併せて実施した。
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