研究実績の概要 |
本研究の目的は、アトピー性皮膚炎に対する寛解維持療法の確立に向けて、CD4+組織常在型メモリーT(Trm)細胞における皮膚での駐在メカニズムを解明することである。 初めに、蛍光標識した卵白アルブミン特異的CD4+T細胞(OT2T細胞)を移入した遅延型過敏症マウスモデルを用いて、炎症収束後も皮膚に長期生存するCD4+T細胞の表現型解析およびその駐在に関して評価した。これらの細胞では、Trm細胞マーカー(CD69, CD103)を発現すること、光変換タンパク(KikGR)発現OT2T細胞またはパラバイオーシスを用いて皮膚に駐在することを証明した。次に、これらのCD4+Trm細胞の局在を二光子励起顕微鏡を用いて評価したところ、血管周囲に局在することに加えて、毛包周囲にクラスターを形成することを明らかにした。さらに、同クラスターにおいて、CD4+Trm細胞は真皮樹状細胞のサブセットの1つであるconventional DC2(CD11c+CD301b+細胞)と近接することを共焦点レーザー顕微鏡による解析から明らかにした。以上より、CD4+Trm細胞は、cDC2とともにクラスターを形成して皮膚に駐在することが示唆された。 また、CD4+Trm細胞のうち、CD103+細胞は制御性T細胞の転写因子であるFoxp3を発現し、CD103-細胞は抗原の再暴露時にTh1サイトカインを産生することが明らかになった。よって、CD103の発現の有無によりCD4+Trm細胞は2つの亜集団に分類できる可能性が示唆された。
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